「トンビがタカを生む」が、実際に起こりえるか?
先日、読んだ「運は遺伝する」続いて、読んでみました。
「教育は遺伝に勝てるか?」 安藤寿康著
本書を読んでみると、遺伝に左右される可能性が高いようです。
しかし、遺伝子はランダムなので、我々は2万個ある遺伝子の中に何があるのか、把握していません。
故に、自分にどういう才能や能力を遺伝を受け継いでいるのか分かりません。
「それを発現させる、形にするものが教育だ」ということで、本書の結論は「教育がないと遺伝子の力を十分、発揮することができない」ということなのだと思います。
本書では、様々な実験結果が、特に一卵性双生児を対象とした調査・研究の成果が紹介されています。
例えば、生まれたばかりで離れ離れになった双生児は、幼い頃は家庭環境によって能力が異なるものの、年を経てくるとだんだん指向が似通ってくる事例が紹介されていたりします。
また、後半で「自由な社会が突きつける過酷さ」についても言及しています。
それは『環境が自由になればなるほど、遺伝的な差がはっきりと現れる社会になる可能性がある』ということです。つまり『親の収入や職業や住んでいる場所に縛られることなく、子どもたちは自由に学校や職業を選ぶことができる』社会、もし、そんな社会が実現したら、『その時は一人ひとりの遺伝的な素質がはっきりと露骨に現れる可能性が高い』ということです。個人的にそんな自由な社会は、とても生きにくい社会のように思えますが。。
そして、著者は最後に「子どもにとって親とは何か」を問うています。
これまでの調査結果から、『いくら子どもに手塩をかけて育てても、児童養護施設で育ったとしても、まっとうに育てられる限り、子どものパーソナリティには大きな差はない』ことが示されます。
問題は「まっとうに」のところですね。
著者は、そうであれば「親が人間としてまっとうに生きる」ことこそが、最高の子育てにつながると主張しています。
読んでみると「なるほど、その通り」と納得させられてしまうところも多く、何だか色々考えさせられた1冊でした。 (小児科 土谷)


