院長先生のブログ
蕁麻疹④
「蕁麻疹の原因の大半は特発性、その中でも感染症、特に感冒に伴うものが多いですよ~」と普段から外来で説明している手前上、一応根拠は書いておこうと思います(リンクのガイドラインにもサラッと記載されています)。
蕁麻疹診療ガイドライン 2018 urticaria_GL2018.pdf (dermatol.or.jp)
今回紹介する論文(Allergol Immunopathol (Madr). 2019 Sep-Oct;47(5):484-490. doi: 10.1016/j.aller.2018.12.010.)は、5歳未満の急性蕁麻疹の要因を調査し、初回エピソード後の慢性もしくは再発性蕁麻疹に進行する予測因子を調べた前向き研究です。
2015年7月~2016年7月までに急性蕁麻疹に罹患した5歳未満の小児がリクルートされ、患者83人は2歳以上、2歳未満に分類されました。慢性もしくは再発性蕁麻疹に進行する危険因子を評価するため、ロジスティック回帰解析を実施しました。
その結果、上気道感染症が急性蕁麻疹の最も多い検出可能な理由でした(49.4%)。
HSV1型は、急性で単回の蕁麻疹発症例で有意に分離されました(p=0.042)。
血管浮腫(p=0.001)や食物アレルギー(p=0.006)は主に2歳未満で検出されました。
蕁麻疹の持続期間と慢性化に正の相関が認められました(r=0.301;p=0.006)。
再発性蕁麻疹の独立した危険因子は以下の通り。
アトピー性皮膚炎がない(OR: 6.95, 95% CI: 1.35-35.67, p=0.020)
血清ヘルペスウイルス検査陰性(OR: 4.25, 95% CI: 0.83-21.56, p=0.040)
病因不明(OR: 3.30, 95% CI: 1.12-9.71, p=0.030)
以上から、急性蕁麻疹の就学前の小児は、初診時に感染症(特に上気道感染症)について評価されるべきであることが分かりました。
ということで、(感冒に代表される)上気道感染症が原因と考えられる小児の急性蕁麻疹は多いようです。 (小児科 土谷)