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見附市小児科 みつけこどもクリニック | 小児科一般診療・予防接種・乳児健診 見附市

コロナ禍における子どもの発達

新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、多くの乳幼児・小児が影響を受けたことは皆様の記憶にも新しいと思います。今回は、パンデミックが未就学児の発達にどのような影響を及ぼしたかについて調査した日本の論文( JAMA pediatrics. 2023 Sep 01;177(9);930-938.)を紹介します。

Association Between the COVID-19 Pandemic and Early Childhood Development – PMC (nih.gov)

 

首都圏のある自治体の全認可保育所(小規模含む)に通う1歳または3歳の乳幼児887例に対して、2017~19年に1回目の調査、2年後に2回目の調査を行いました(データは2022年12月8日~2023年5月6日に解析した)。追跡期間中にコロナ禍を経験した群とそうでない群の間で、3歳または5歳時(各年4月1日時点の年齢)の発達を比較しました。乳幼児の発達は「KIDS乳幼児発達スケール」を用いて保育士が評価し、分析を行った際は、子どもの月齢、性別、1回目調査時の発達、保育園の保育の質、保護者の精神状態、出生時体重、家族構成、世帯所得、登園日数などの影響が考慮しました。

 

その結果、5歳時点でコロナ禍を経験した群は、そうでない群と比べて平均4.39ヵ月の発達の遅れが確認されました。その一方、3歳時点で経験した群では明確な発達の遅れはみられず、むしろ運動、手指の操作、抽象的な概念理解、対子供社会性、対成人社会性の領域では発達が進んでいたことが分かりました。コロナ禍で、3歳、5歳ともに発達における個人差・施設差が拡大していることも明らかになりました。

また、質の高い保育を提供する保育園に通っていた子どもは、コロナ禍でも3歳時点の発達が良い傾向にあったことが分かりました。その一方、保護者が精神的な不調を抱える家庭の子どもは、コロナ禍における5歳時点の発達の遅れが顕著でした。

 

3歳と5歳で対照的な結果だったのは面白いですね。

3歳児のような幼い年齢の子どもでは、保護者が在宅勤務をすることで大人との1対1のコミュニケーションをする機会が増えた結果、コロナ禍でも3歳児の発達には良い影響があったのでしょう。一方、5歳児の発達にとって、社会性を身に付けるためには保護者以外の他者との交流が重要であり、コロナ禍によって保護者以外の大人や兄弟・姉妹以外の子どもと触れ合う機会が制限されたことが発達に悪い影響を与えたのでしょう。

 

コロナ禍が子どもたちに与えた影響については、今後も様々な研究がなされていくと思います。

残念ながら、パンデミックは他の新興感染症で今後も引き起こされる可能性があります。

次に「繋げる」ために、COVID-19がひと段落した今、しっかり検証して欲しいです。 (小児科 土谷)

 

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