院長先生のブログ
SARS-Cov-2持続感染に対する抗ウイルス薬の効果②
おとといの話題に関連して、ニルマトルビル(パクスロビド)によるlong COVID発症抑制効果を米国退役軍人において検討した論文(Ann Intern Med. 2023 Oct 31.)を紹介します。
結果のみを簡単に示しますが、対象は9593人(男性86%,66歳)で、17.5%はワクチン未接種でした。
静脈血栓塞栓症および肺塞栓症の複合リスクは低下(サブハザード比, 0.65[95%CI、0.44~0.97])したものの、31のlong COVID症状(心疾患、肺疾患、腎疾患、血栓塞栓症、消化器疾患、神経疾患、精神疾患、筋骨格系疾患、内分泌疾患など)のうち、殆どの症状の罹患率でニルマトルビル治療群(n=9593)とマッチさせた未治療の対照群との間に有意差が認められませんでした(しかも、著者は血栓塞栓イベントの複合リスク低下についても、多くのアウトカムを評価した結果、偶然に偽の相関が生じた可能性があると指摘している)。
以上から、パクスロビドは31あるlong COVID症状のほとんどを抑制できない可能性があることが分かりました。
やっぱり、SARS-Cov-2ウイルスの持続感染に対する抗ウイルス薬の効果は限定的なんでしょうか。
引き続き、今後の結果に注目していこうと思います。 (小児科 土谷)