院長先生のブログ
過敏性腸症候群は炎症性腸疾患よりもうつ病の重症度が高い
今日は過敏性腸症候群(IBS)に関する話題( Journal of affective disorders. 2018 Sep;237;37-46. )です。IBSや炎症性腸疾患(IBD)といった慢性消化器疾患の患者では、うつ病が併存している割合が高いことが知られています。この論文では、IBSおよびIBD患者におけるうつ病の有病率や重症度について検討しています。
PubMed、PsycINFO、Embase、Cochrane Library、Wan Fang、SinoMed、Chinese National Knowledge Infrastructureを使用して、2017年9月12日までのデータに対して体系的な文献探索を行い、比較解析のためのIBS患者とIBD患者を抽出しました。さらに、ランダム効果モデルによって併存したうつ病の標準化平均差(standardized mean difference:SMD)とオッズ比を算出し、今回の解析に用いた研究から併存した不安に関するデータを抽出し、メタ解析を行いました(メタ解析の質の評価はNewcastle-Ottawa Scaleを用いた)。
その結果、IBS患者1,244名とIBD患者1,048名が22件の研究から抽出されました。22件中16件の研究が、NOSにより「質が高い」と評価されました。
*うつ病の有病率は、IBS群とIBD群で有意差は認められませんでした(研究数10件、OR=1.18、95%CI:0.87~1.60、p=0.29)。
*IBS群は、IBD群と比べて、以下の症状の重症度が高いことが分かりました。
うつ病(pooled SMD=0.18、95%CI:0.04~0.33、p=0.01)
不安(pooled SMD=0.31、95%CI:0.14~0.49、p=0.0006)
以上から、過敏性腸症候群(IBS)患者は炎症性腸疾患(IBD)患者と比べて併存するうつ病や不安の重症度が高いことが分かりました。
機能性消化器疾患とはいえ、うつ病や不安といった併存疾患の重症度が高いことを考えると、決して甘く見てはいけません。プライマリーに関わる者として、肝に銘じておきます。 (小児科 土谷)