院長先生のブログ
幼児期の最適な睡眠習慣は子どもの将来にプラスに働く
幼児期の睡眠習慣と就学後の学力との関連について検討した論文( Scientific reports. 2023 Nov 27;13(1);20926.)を紹介します。
2011年4月~2012年3月または2013年4月~2014年3月の間に尼崎市で生まれた小児4,395人を対象に学童期まで追跡調査を行いました。3歳時点の睡眠習慣については、3歳児健診データから就寝時間(18時、19時、20時、21時、22時および23時)と起床時間を収集しました。学力は1年生時の国語と算数のテストの点数(100点満点)に基づき評価しました。非認知能力については、自尊心(あなたは良い人間だと思いますか?)と勤勉さ(何事にも熱心に取り組みますか?)、思いやり(あなたは思いやりのある人ですか?)という3つの質問に対し、子どもたちに「はい」か「いいえ」で回答してもらいました。
調査に参加した子どものうち、就寝時間は21時が46.5%(2,045人)と最多で、22時(35.4%、1,555人)、18時~20時(11.5%、506人)と続きました。小学校1年生時のテストの平均点は、国語が68.7±19.9点、算数が67.2±22.5点でした。
解析の結果、3歳の時点で早く就寝した子どもほど、小学校1年生時の学力が高かった(就寝時間が「18時~20時」「21時」「22時」「23時以降」の児童の平均点は、国語はそれぞれ71.2±19.7点、69.3±19.4点、68.3±20.1点、62.5±21.3点、算数はそれぞれ70.3±21.8点、67.6±22.0点、66.9±22.6点、61.8±25.4点)ことが分かりました(下図は上から、国語、算数の平均点)。
重回帰分析の結果、3歳時点の就寝時間は小学校1年生時の学力と関連していることが分かりました。一方、睡眠の長さ(「6~8時間」「9時間」「10時間」「11時間以上」)と学力の間には有意な関連は認められませんでした。
非認知能力との関連については、3歳時点の就寝時間は自尊心との関連は見られませんでしたが、就寝時間が遅い子どもほど勤勉さは低下し(就寝時間18~20時に対するオッズ比は、「21時」1.98、「22時」2.15、「23時以降」2.33)、思いやりが弱かった(同じくオッズ比は「22時」1.76、「23時以降」2.15)ことが分かりました。
以上から、非認知能力については子どもたちの自己申告に基づいていることなどの研究の限界はありますが、3歳時点の就寝時間は小学校1年生時の国語と算数の学力と関連していること、幼児期の就寝時間の早さと非認知能力の高さとの間には正の関連があることが示されました。
幼児期の最適な睡眠習慣は子どもたちの将来にプラスに働くようです。規則正しい睡眠習慣は大切ですねw (小児科 土谷)