院長先生のブログ
long COVIDの病態 -その他㉑-
long COVIDの症状(疲労や認知機能障害)が回復しにくい危険因子を特定することを目的とした研究(eClinicalMedicine. 2024 Feb 3;69:102456.)を紹介します。
ドイツのCOVIDOM/NAPKON-POPコホートの縦断的データを解析しました。SARS-CoV-2感染が確認された参加者は、感染後少なくとも6ヵ月(ベースライン)と18ヵ月(フォローアップ)の時点で、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue (FACIT-Fatigue)スケール(カットオフ≦30)とMontreal Cognitive Assessment (MoCA、カットオフ≦25)を用いて評価されました。単変量ロジスティック回帰モデルおよび多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、評価間の疲労回復または認知障害の予測因子を同定しました。
2020年11月15日~2023年5月9日の間に、合計3038人の参加者がベースライン時(中央値は感染後9ヵ月)の評価を受け、その83%が追跡調査されました(中央値は感染後26ヵ月)。
ベースライン時(感染から9ヶ月後)、FACIT-FatigueまたはMoCAのカットオフスコアを用いると、21%(95%信頼区間(CI)[20%、23%])に疲労があり、23%(95%CI[22%、25%])に認知障害があったことが分かりました。これらは時間経過とともに改善し、約半数は2年以内に回復しました(それぞれ46%と57%)。
一方、ベースライン時に疲労に加えて、高度の抑うつ症状および/または頭痛を認めた患者では、回復の可能性が有意に低かったことが分かりました。また認知機能が回復しない危険因子は、男性、高齢、12年未満の学校教育歴でした。SARS-CoV-2の再感染は疲労や認知機能障害の回復に有意な影響を及ぼしませんでした。
抑うつ症状や頭痛を合併する場合、long COVIDによる疲労は回復しにくいみたいです。注意しましょう。 (小児科 土谷)