院長先生のブログ
COVID-19 ワクチン⑧

SARS-CoV-2感染は動脈/静脈血栓イベントのリスク増加と関連していることは分かっていますが、このリスク増加に対するワクチン接種の効果について検討した論文を紹介します。
NHS Englandの承認のもと、英国人口の約40%の電子健康記録を用いて、異なる種類のワクチン接種下および変異株流行下におけるCOVID-19診断と心血管疾患との関連について検討しています。
簡潔にまとめると、この調査では感染者を3群、①ワクチン接種が始まる前に感染した人たち、②ワクチン開始後にワクチン接種を受けずに感染した人たち、③同時期(=ワクチン開始後)にワクチン接種を受けながら感染した人たち、に分け、この3群間で、感染後に見られた重篤な心血管系疾患の発症リスクを比べています。
その結果、ワクチン未接種群(上記の①②群)は、ワクチン接種を受けた③群に比べて、重篤な心疾患の発症リスクが数倍高かったことが分かりました。この重篤な心疾患発症リスクは新型コロナ発症から約4週間で低下するものの、その後2年近く発症リスクがやや高い状態が続いていたことが分かりました。
一方、ワクチン接種群ではこのリスクが半分程度に低下しており、この傾向はデルタ株流行時だけでなく、オミクロン株流行時でもほぼ同様に認められました。
以上から、COVID-19に感染すると重篤な心血管イベントが起こりやすくなる一方、ワクチン接種をすることで重篤な心血管イベントが起こりにくくなるということが分かりました。
もちろん、ワクチン接種は副反応もあるのでゼロリスクではありませんが、重篤な心血管イベントを減らすという大きなベネフィットがあることを覚えておきましょう。 (小児科 土谷)