院長先生のブログ
COVID-19 小児編 -日本でCOVID-19発症後に死亡した小児・青年患者の特徴は?-
日本でCOVID-19発症後に死亡した0~19歳の小児・青年患者の特徴を明らかにするために行われた研究の結果(Emerging infectious diseases. 2024 Aug;30(8);1589-1598.)を紹介します。
厚生労働省、地方自治体、保健所、HER-SYS、学会、メディアから小児・青年死亡症例の情報を収集しました。症例は、発症または死亡日が2022年1月1日~9月30日で、年齢が0~19歳で、SARS-CoV-2感染後に発生した死亡症例と定義しました。死因は、中枢神経系異常、心臓異常、呼吸器異常、その他、不明に分類しました。患者の発症から死亡までの日数の中央値と四分位範囲(IQR)を算出し、選択された変数の適合度を検定するために、x2検定またはFisherの正確確率検定を用いました。発症から初回診察、心肺停止、または死亡までの間隔を異なる死因間で比較するためにlog-rank検定を用いました。
その結果、COVID-19発症後に死亡した0~19歳の小児・青年患者62例が確認され、うち53例について詳細な調査を実施できました。46例(87%)は内的死因、7例(13%)は外的死因(新型コロナ感染後の溺水や窒息などの予期せぬ事故)でした。
内的死因患者46例のうち、1歳未満が7例、1~4歳が15例、5~11歳が18例、12~19歳が6例で、19例に基礎疾患が認められました。
コロナワクチン接種対象者(5歳以上)は24例で、そのうち21例(88%)がワクチンを接種していませんでした。2回のワクチン接種済みの3例(12歳以上)のCOVID-19発症日は、最後のワクチン接種日から3ヵ月以上経過していました。
入院前は呼吸器症状よりも非呼吸器症状のほうが多く、疑われた死因は、多い順に、中枢神経系異常(急性脳症など)が16例(35%)、心臓異常(急性心筋炎など)が9例(20%)、呼吸器異常(急性肺炎など)が4例(9%)でした。小児の多系統炎症性症候群(MIS-C)は認められませんでした。
基礎疾患のない患者(27例)で、最も多く疑われた死因は中枢神経系異常(11例)、次いで心臓異常(5例)でした。呼吸器異常は認められませんでした。
入院前に救急外来で確認された死亡者数は19例、入院後の死亡者数は27例でした。患者の46%は院外心停止で死亡していました。
中枢神経系異常を認めた16例では、発症から心肺停止までの中央値は2日(IQR:1.0~12.0)、発症から死亡までの中央値は3.5日(2.0~14.5)でした。5~11歳が最も多く(9例/56%)、1歳未満はいませんでした。急性脳症の12例のうち、出血性ショック脳症症候群(HSES)が疑われたのは5例、急性劇症脳浮腫を伴う脳症が1例、分類不能脳症が 6例でした。
心臓異常を認めた9例では、発症から心肺停止までの中央値は4日(IQR:2.0~4.0)、発症から死亡までの中央値は4日(2.0~5.0)でした。 8例に臨床的急性心筋炎が検出されました。
以上から、日本の小児・青年におけるCOVID-19発症後の死因として、中枢神経系異常、次いで心臓異常が多く、死亡例はワクチン未接種者、発症から死亡までの期間が7日未満に多いということが分かりました。
基礎疾患の有無にかかわらず、COVID-19発症から少なくとも最初の7日間は要注意です。 (小児科 土谷)