院長先生のブログ
新型コロナ・レプリコンワクチンの安全性は?
来月(10月)から高齢者向け・新型コロナワクチン接種が開始されます。
これまで使用されていたファイザー・モデルナ社製以外のワクチンも加わったため、(案の定ですが)SNSでは安全性について色々と騒がれていますw
タイムリーな話題として、ベトナムで行われたレプリコンワクチンの臨床第1相、第2相、第3相試験の結果(Nat Commun. 2024 May 14;15(1):4081.)を副反応を中心に簡単に紹介させて頂きます(第3相試験は、ワクチン接種群が約8,000人、プラセボ投与群が約8,000人で行われています)。
この報告によると、接種後7日間以内では30~40%の人が局所的副反応が訴え、さらに40~50%近くの人が全身的副反応を訴えていました(これらの頻度は、これまで使用されたmRNAワクチンと大差は無いようです)。かなり高い割合のように見えますが、いずれも軽度のものが殆どです。
注意すべきポイントは、プラセボ投与群でも約10%の人が局所的副反応があったと訴え、20~30%の人たちが全身的副反応があったとしているところです。そして、より長期的な副反応は、接種後28日間を見る限り、ワクチン群とプラセボ群には差は見られず、重篤な副反応を示した人や死者数もワクチン群とプラセボ群で有意差は認められませんでした。なお、ワクチン群で5名、プラセボ群で16名が亡くなっていますが、ワクチン群の死者5名のうち1名が新型コロナ感染で死亡、プラセボ群では死者16人のうち9名が新型コロナ感染によるものです。要するに、プラセボ群では新型コロナに感染して重症化し亡くなった人がワクチン群よりずっと多かったという訳です(それ以外の死者は主にその他の原因で亡くなったもの)。もちろん、今回の研究は無作為比較対象試験であるため、ワクチン群とプラセボ群の選択に作為が入ることはありません。
以上から、臨床第三相試験の「接種後28日間の安全性データ」を見るかぎり、レプリコンワクチンにとりわけ副反応が多いという訳ではないようです。
その一方、レプリコンワクチンは副反応が低減されることが当初期待されていたわけで、「それなりに副反応はある」という今回のデータを考えると、わざわざレプリコンワクチンに乗り換える積極的な理由は無いように思えます。
当院も、市内の接種実施医療機関が少ないため、秋からの見附市・新型コロナウイルス予防接種に協力させて頂く予定です。使用するワクチンは使用実績のあるファイザー社製のコミナティと副反応が強かった人向けに武田薬品のヌバキソビッドを採用しています。
これまでのブログで取り上げてきたように、高齢者や基礎疾患のある方々にとって、SARS-Cov-2ウイルスは甘く見て良いウイルスではありません。前回のワクチン接種から間隔が空いていますので、接種対象者に該当する皆様は、是非ワクチン接種をご検討ください。 (小児科 土谷)