アルツハイマー病を発見したアロイス・アルツハイマー博士の誕生日ということで、日本認知症予防学会が6月14日を認知症予防の日に制定し、認知症予防の大切さを啓発しています。

そこで、今日は認知症にちなんだ話題、夜勤労働と認知症リスクの論文( Journal of neurology. 2023 Jul;270(7);3499-3510.)にしたいと思います。

The association of night shift work with the risk of all-cause dementia and Alzheimer’s disease: a longitudinal study of 245,570 UK Biobank participants | Journal of Neurology (springer.com)

 

データ抽出にUK Biobankのデータベースを用いました。対象は24万5,570例、平均フォローアップ期間は13.1年でした。夜勤とすべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症との関連性を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いました。

 

その結果、すべての原因による認知症を発症した患者は1,248例(アルツハイマー病を発症した患者は474例)でした。
最終的な多変量調整済みモデルでは、認知症のリスクは、常に夜勤をしている労働者で最も高く(HR:1.465、95%信頼区間[CI]:1.058~2.028、p=0.022)、次いで不規則なシフト勤務の労働者でした(HR:1.197、95%CI:1.026~1.396、p=0.023)。

最終的な多変量調整済みモデルでは、アルツハイマー病の発症リスクも同様に、常に夜勤をしている労働者で最も高かった(HR:2.031、95%CI:1.269~3.250、p=0.003)ことが分かりました。
常に夜勤をしている労働者は、アルツハイマー病のGRSの低・中・高、いずれのグループにおいても、アルツハイマー病の発症リスクの高さと関連していたことが分かりました。

 

以上から、夜勤をしている労働者は、すべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症リスクが常に高いことが示唆されました。また、アルツハイマー病の発症リスクは、アルツハイマー病の遺伝的リスクスコア(GRS)の違いにかかわらず、常に夜勤をしている労働者で高いことが分かりました。

 

このようなリスクを背負ってまで夜勤をしてくれている皆様(職種を問わず)には本当に感謝しかありません。

昨今、医療業界にも働き方改革が叫ばれるようになりましたが、(職種を問わず)夜勤をしてくれている方々が本当の意味で報われる社会に変わっていって欲しいなと思います。 (小児科 土谷)