随分前に上京した際、電車の中吊り広告に、「降圧剤やコレステロールのくすりなど飲んでも仕方がない」、「血圧やコレステロールは下げなくても良い」という記事が出ていたので、相変わらず妙な記事書いてるな~と思った反面、どんな根拠があってこんな話になっているのか?地味に気になったので帰ってから調べてみました。
多分、元ネタになったのはこの論文(JAMA, 266(9):1225, 1991)なのかと思います。他にもあるのかもしれませんがw
この論文では「治療群で血圧やコレステロール値は治療前に比べて下がったが、15年後を見ると治療群のほうが対照群よりも死亡率が高かった」と書かれていますが、著者らが再度、1995年にデータを再調査した結果、喫煙、高血圧、高コレステロールはいずれも生命予後に悪い影響を与えていたことが確認され、特に喫煙とがん関連死が相関していたことが分かりました。そして、著者らは、前回「治療群のほうが対照群よりも死亡率が高かった」理由として、当時用いられていた治療法が適切でなかった可能性を指摘しています(Brit Heart J, 74(4):449, 1995)。
つまり、最初の論文をもとにして「高齢者に検査は不要」とか「薬は飲まないほうがよい」と結論づけることは出来ないというわけです(勿論、著者もそのような結論を下していません)。
ちなみに、今回の見出しに良く見られる手法は、書店で見かける『否定本』と同じ手法です。
『この薬は効きます!』と書いても雑誌や本はあんまり売れませんが、皆が飲んでいる薬に対して、数%に満たない重大な副作用報告(因果関係が不明を含む)を取り上げて、『この薬を飲むと死にます!』と書くと、バカ売れになるという。。。
これで薬を本当に飲まなくなって、信じた人の病状が悪化しても、言論の自由を旗印に、一切責任を取らないところが本当にタチが悪いんですけど。。
情報過多の現代では、初等教育のうちから「情報の吟味と利用」に関して、基本的なところから教育した方が良いんだろうと思います。そうすれば、マスメディアやSNSに蔓延る情報が、如何に玉石混淆で鵜呑みに出来ないものが多いかわかると思います。
何事も鵜呑みにせず、疑ってかかる姿勢が大事です。 自戒もこめて。
日々精進しようと思います。 (小児科 土谷)


