小さなお子さんへの薬の投与は大人以上に注意や工夫が必要になります。お薬を飲ませる際、参考にしてみて下さい。
乳児の場合
シロップの場合
スポイトやスプーンを用いて少量ずつ飲ませましょう。スプーンの上で薬を少量の水またはぬるま湯などに溶いて、まず1回ゴクンと飲ませ、その後すぐに水やジュースなどを飲ませます。最初に多めの水で溶いてし まうと飲み終わる前に薬の苦みが出たり、量が多くて飲みきれず薬を飲み残す可能性があるので注意が必要です。
スポイトを使用する場合は、誤嚥に気をつけて口のわきから、ほおの内側に少量ずつたらして飲ませます。
哺乳瓶を使用する場合は、少量の水またはぬるま湯などに溶かした薬を、乳首に入れて吸引させ、乳首に薬が残らないように水やぬるま湯などを追加して飲ませます。
粉薬の場合
一口で飲める量の水か湯冷ましで溶かして、シロップのように飲ませましょう。もしくは、薬を一口で飲める量の水またはぬるま湯(薬1gに対して4~5滴)でペースト状・だんご状にねり、味のわかりにくい、ほおの内側やあごの奥の方に塗布し、その後すぐ、水やぬるま湯などを飲ませて流し込むのも良いでしょう。
注意点
誤嚥しないように、抱っこまたは上体を起こして与えます。「お薬をミルクに混ぜてもいいですか?」という質問をよく聞きますが、薬をミルクに混ぜることで味が変わり、ミルク嫌いになってしまう可能性もあるので、避けた方が良いでしょう。
幼児の場合
味覚や好き嫌いが多様化し本人の意思が出てくる分、服用が難しくなってきます。基本的には薬をほかのものに混ぜず、水やぬるま湯で飲ませる習慣をつけましょう。嫌がるときは、剤形や味等の工夫が必要となってきます。オブラート、服薬補助ゼリーなどを利用したり、食品を使った工夫をしたりして対応しましょう。
食品を使った服薬の工夫
砂糖や人工甘味料、シロップを加えたり、他の食品(1回服用分ごと飲みきれる量)と混ぜます。
苦味をうまく隠せるものは粘度が高く味の濃い食品(アイスクリーム、チョコレート、コンデンスミルク、ミルクココアなど)です。1歳未満の乳児には「小児ボツリヌス症」を発症する場合があるので、ハチミツは与えてはいけません。飲食物に混合する場合、薬剤によっては苦味が発現したり、相互作用により吸収に影響が出たり、飲み残しがあった場合、投与量が不正確になるなどの問題があるため注意が必要です。薬を溶かしたまま長時間放置すると苦味が増したり、効果が弱くなることがあるため服用直前に混ぜるようにしましょう。
食品との混合に注意する薬剤(例)
| 薬剤名 | 注意事項 | |
| マクロライド系抗生物質 | クラリスドライシロップ エリスロシンドライシロップ ジスロマック細粒小児用 |
酸性飲料(オレンジなどの柑橘系ジュース、スポーツドリンク、乳酸菌飲料、ヨーグルトなど)と混ぜると苦味が出現 |
| セフェム系抗生物質 | セフゾン小児用細粒 | 鉄剤との併用で吸収低下。その食品との服用間隔は2時間以上空ける。粉ミルク注意 |
| テトラサイクリン系抗生物質 | ミノマイシン顆粒 | カルシウムイオンとの併用で吸収低下 牛乳、粉ミルク、乳製品との併用避ける |
*薬や服薬のことで分からないことがあれば、薬剤師に相談しましょう。
お薬が飲めたら褒めてあげましょう!
お子様が大きくなるにつれて、話せる言葉や出来ることが増えていきます。およそ1歳半~4歳くらいから、「イヤ!」「これがいい!」といった自己主張が増えるため、この時期はお子様がお薬を飲むのを嫌がることがあります。
このような場合は、お子様にお薬を飲む理由を説明することで、飲めるようになることもあります。たとえば、「体の中のばい菌が悪さをしているせいでお熱と咳が出ているんだけど、このお薬は、そのばい菌をやっつけてくれるんだよ~」などと、やさしく・丁寧に説明してあげると良いでしょう。
お薬を上手に飲めたときは、必ず褒めてあげましょう。子どもは、褒めてもらうと次もがんばってお薬を飲むようになることがあります。お薬を飲めないとつい叱ってしまいますが、叱りすぎるとお薬が嫌いになってしまうことがあるので要注意です。
こんなときどうする? Q&A
薬を吐いてしまったとき
服用してからどれくらいの時間で吐いたか、また吐いた量によっても対応が違ってきます。1つの目安として、10分以内であれば再び服用させ、10分以上 経過していれば、体内に入った薬が吸収されている可能性があるので、重ねて内服しないで様子を見ましょう。
薬を飲み忘れてしまったとき
気がついたら、できるだけ早く飲むようにします。次の薬を飲む時間が近いときは、飲むのをやめるか、気が付いたときに飲んで、次に飲む時間を遅らせるようにします。目安は以下のように考えて下さい。
- 1日3回の薬:次に飲む時間まで4時間以上空ける
- 1日2回の薬:次に飲む時間まで5時間以上空ける
- 1日1回の薬:次に飲む時間まで8時間以上空ける
いつ飲ませたら良い?
処方された薬は帰宅後すぐに飲ませましょう。乳児の場合は、授乳の前に飲ませると良いでしょう。
病気のお子さんは規則正しく食事がとれないことが多く、食後はお腹がいっぱいだったり、食べたものと一緒に吐いたりすることがあります。特別な指示がない限り、食前・食後にこだわらず、時間になったら飲ませましょう。大人の薬と違い通常の服薬量で空腹時に胃があれることはほとんどありません。
1日2回の薬は朝と夜、約12時間ごと、1日3回の薬は6時間ごとに服薬させることが理想的ですが、2~3時間の服薬時間のズレはあまり気にする必要はありません。
途中でやめても良いですか?
処方された薬は、きちんと最後まで飲ませましょう。抗菌薬の不適切な使用は耐性菌の増加に繋がります。また、服薬を自己中断することで、せっかく快方に向かっていた病気が「ぶり返し」てしまうリスクがあります。途中でやめて良いかは医師に必ず確認しましょう。

