健康的な食生活を送ることで体の生物学的老化速度が遅くなり、それが認知症の発症に保護的な効果をもたらすことが報告されています(Annals of neurology. 2024 Feb 26; doi: 10.1002/ana.26900.)。
フラミンガム心臓研究(3世代のコホートを対象に1948年に開始された継続中の研究)の1971年に開始された第二世代コホートから、60歳以上で認知症がなく、食事、エピジェネティクス、および追跡データのそろう1,644人(平均年齢69.6歳、女性54%)が対象とされました。これらの対象者は、4〜7年おきに9回の追跡調査を受けており、調査ごとに身体診察を受け、ライフスタイルに関連した質問票へ回答するとともに、血液採取と、1991年以降は神経認知テストを受けました。5回目(1991〜1995年)から8回目(2005〜2008年)の調査時の食事内容から、MIND(生活習慣病の予防に良いとされる地中海食と高血圧予防を目的にしたDASH食を組み合わせた食事法:全粒穀物、野菜、ナッツ類、豆類、葉物野菜、魚、家禽肉などの脂身の少ない肉を多く摂取する一方で、赤肉、砂糖の多い食品、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の多い食品は避ける)食の遵守状況の指標となるMIND食スコアが算出されました。
8回目の追跡調査から2018年までの記録を用いて認知症の発症と死亡について調査したところ、140人(8.5%)が認知症を発症し、471人(28.6%)が死亡していました。解析の結果、MIND食スコアが高いほど生物学的な老化速度が遅くなり、認知症の発症リスクが低下することが明らかになりました。
具体的には、MIND食スコアが1SD増加するごとにダニーデンPACEで評価した老化速度が0.20SD遅くなり、10,000人当たりの認知症発症例が33.6例減少するという結果でした。
媒介分析からは、健康的な食事と認知症発症リスクの低下との関連性のうちの27%は老化の遅れに起因すると推定されました。
食事と認知症の関連については、まだ十分に解明されていない部分があるため、今後の研究でそのメカニズムが明らかになって欲しいと思います。そして、僕も健康的な食生活を送っているとは言い難いので、気をつけますw (小児科 土谷)