Long COVIDを呈する頻度は男性より女性の方が高く、症状にも性差があることが知られています。
今回はその謎に迫った研究について紹介します(medRxiv[Preprint]. 2024 Mar 4:2024.02.29.24303568. doi: 10.1101/2024.02.29.24303568.)。
Sex differences in symptomatology and immune profiles of Long COVID | medRxiv
165人の患者を対象として、免疫・内分泌プロファイリングを明らかにする探索的横断研究が報告されました。
女性と男性では、症状の出現の仕方や臓器障害のパターンが異なっていました。具体的には、女性のほうが症状は重く、その症状は多臓器にわたっていました。女性優位の症状の代表は脱毛、男性優位の症状の代表は性機能障害でした。記憶障害、嗅覚・味覚障害は女性優位でした。
そして、Long COVIDを特徴づける免疫機能の男女間の差異を同定しました。女性患者では、疲弊したT細胞、サイトカイン分泌T細胞の頻度が増加し、(EBV、HSV-2、CMVを含む)潜伏するヘルペスウイルスに対する抗体反応性が高く、テストステロン値が低かったことが分かりました。その一方、男性患者では、単球と樹状細胞の頻度が減少し、NK細胞が増加し、IL-8とTGF-βファミリーを含む血漿サイトカインが増加していました。
女性ではテストステロン低下が、男性ではエストラジオール低下が long COVIDを予見するマーカーであり、その背景には H-P-O axis(視床下部-下垂体-臓器系)の障害が関与しているものと考えられました。
以上から、Long COVIDでは脳の「視床下部→下垂体→副腎や性腺組織」の調節系に障害が生じている可能性があることが分かりました。
これまでにLong COVIDでコルチゾールが低下することが指摘されていましたが、(プレプリント論文ですが)今回の報告を加味すると女性ではテストステロン、男性ではエストラジオールの低下が long COVIDを予見するマーカーになりうることが分かりました。
SARS-Cov-2ウイルスも、最早「新型」と言えないくらい社会に定着し、long COVIDの病態についても色々分かってきました・・。なかなか時代のスピードに追いつけませんねw (小児科 土谷)