何となく、言われなくてもそんな気がしてましたが、怒りの感情は長期的に心血管疾患の発症リスクを高める可能性のあるみたいです(Journal of the American Heart Association. 2024 May 07;13(9);e032698.)。
18歳以上の健康な成人280人を対象に、ランダム化比較試験を実施し、誘発された怒り、不安、悲しみの感情が血管内皮機能に与える影響を調べました。対象者の中に、心血管疾患患者、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの心血管疾患のリスク因子を有する人、喫煙者、常用薬の使用者、精神病・気分障害・人格障害の診断歴を有する人は含まれていませんでした。
対象者は、怒り(72人)、不安(72人)、悲しみ(69人)、中立的な感情(69人)を誘発するタスクを行う4群にランダムに割り付けられました。
怒り誘発群と不安誘発群は、怒りと不安の感情を呼び起こす個人的な経験について8分間想起し、悲しみ誘発群は、悲しみの感情を誘発するように作られた簡潔な文言を8分間読み、中立的感情群(対照群)は、8分間数字を声に出して数えることで、それぞれに割り当てられた感情を誘発しました。各タスクの実施前後、およびタスク終了の3、40、70、100分後に、対象者の血圧と心拍数の測定を行い、また、エンドパット2000による反応性充血指数の算出とフローサイトメトリーによる内皮細胞由来の微小粒子と血管内皮前駆細胞の測定により血管内皮機能を評価しました。
その結果、怒り誘発群では、血管の拡張機能が対照群に比べて有意に低下しており、この拡張機能低下はタスク終了から最長40分後まで持続することが明らかになりました。
一方、不安誘発群や悲しみ誘発群ではこのような血管拡張機能低下は認められませんでした。
血管の拡張機能障害は動脈壁への脂肪蓄積の前兆であるとされており、脂肪蓄積は心筋梗塞や脳卒中のリスクを上昇させる可能性があるため、怒りの感情は長期的には心血管疾患の発症リスクを高める可能性がありそうです。
怒りの感情によって、血管拡張機能障害がおこるメカニズムはまだ明らかになっていませんが、おそらくは、自律神経系、ストレスホルモンや動脈の炎症の活性化などが関与しているんでしょう。
アンガーマネジメント、大事ですね!
生活の中で、「怒り」の感情を減らすために何が出来るか?
適度な運動、ヨガなど、自分が出来る範囲で、あれこれ試してみるのも良いのではないでしょうか。 (小児科 土谷)