今日は地域における多世代を対象とした食育プログラムに関する日本で行われた研究(Nutrients. 2024 May 28;16(11); pii: 1661.)を紹介します。
多世代を対象に、孤独感の緩和を目的とした1日完結型の食育プログラムを実施する単群介入研究を行いました。食育プログラムは東京都調布市において、2022年12月、2023年7月と8月に実施しました。
参加者の数は全体で、小学生の子どもが21人、保護者が16人、大学生が3人、高齢者が6人でした。無料のパン作り体験としてプログラムを設計し、発酵の時間にはバター作りやシャーベット作りを行い、自作のパンの試食会を行いました。世代の異なる参加者とペアになってもらい、参加者同士が会話を楽しめるようにスタッフがサポートしました。
小学生の子ども21人の特徴は、低学年が多く(1~2年生10人、3~4年生7人)、女子の割合が66.7%で、パン作りの経験割合は71.4%でした。
大人25人の年齢範囲は20歳から84歳で、女性の割合が88.0%でした。
「さみしさを感じる」など5項目の質問からなる「子ども用孤独感尺度(Five-LSC)」を用いて、子どもの孤独感を評価したところ、介入前後で合計得点が有意に低下し、孤独感が軽減していることが示唆されました(項目それぞれの得点の変化については有意差はでませんでした)。

大人については、孤独を感じることが「決してない」と回答した人の割合が、介入前の12.5%から介入後は20.8%へと有意に上昇しました。一方、3項目からなる「UCLA孤独感尺度」の合計得点による評価では、有意な変化は認められませんでした。各項目のうち、仲間付き合いがないといつも感じている人は減少した一方で、疎外されていると時々感じる人は増加していました。また、ソーシャルキャピタルのうち、地域の人が他の人の役に立とうとすると思うことや地域への愛着について、大人において評価が向上していました。
参加後に知り合いや友人を作ることができた人の割合は、大人が70%、子どもが43%で、参加者全員がプログラムを楽しんだと回答していました。楽しんだ人の割合が高かった内容は、バター作り(子ども88.9%、大人93.3%)、シャーベット作り(子ども77.8%、大人80.0%)、自分で焼いたパンを食べる(子ども77.8%、大人73.3%)、世代間交流(子ども55.6%、大人93.3%)でした。
以上から、日本では多世代を対象とする食育プログラムが子どもの孤独感に肯定的な影響を及ぼし、大人の孤独感には部分的に肯定的な影響を及ぼすことが示唆されました。
コロナ禍において、日本人の自殺念慮に最も影響した要因は「孤独感」です。
孤独対策として、人と人との「つながり」を実感できる地域作りが重要です。
「つながり」を感じられる場所を確保する手段の一つとして、「食育推進」大切ですねw (小児科 土谷)


