アトピー性皮膚炎(以下AD)児の母親の睡眠障害について調べた論文( JAMA dermatology. 2019 May 01;155(5);556-563.)を紹介します。

Assessment of Sleep Disturbances and Exhaustion in Mothers of Children With Atopic Dermatitis – PMC (nih.gov)

 

英国の出生コホートを用いた縦断研究からAD児と非AD児それぞれの母親の長期にわたる睡眠障害を比較し、睡眠障害が児の疾患重症度と関連しているかを調査しました。

英国・エイボン州に在住で、1991年4月1日~1992年12月31日に出産が予定されていた全妊婦を対象としたコホート研究「Avon Longitudinal Study of Parents and Children」のデータを用いて解析しました。

 

本コホート研究の2次解析である本解析は2017年9月~2018年9月に行われました。

母児のペアに対し、児が生後6ヵ月~11歳までフォローアップを行い、児のADの活動性や重症度の経時的変化を測定しました。

母親には、複数時点で繰り返し睡眠評価について自己申告してもらい、その結果を測定しました。主要評価項目は、母親の一晩の睡眠時間(6時間未満vs.6時間以上)、入眠困難、早朝早期覚醒、睡眠不足、日中の疲労についての経時的変化としました。

 

その結果、1万3,988組の母児が、児の誕生から中央値11年間(四分位範囲:7~11)のフォローアップを受けました。母親の年齢は82.9%(1万1,585/1万3,972例)が21~34歳、人種は97.4%(1万2,001/1万2,324例)が白人でした。児の性別は51.7%(7,220/1万3,978例)が男児でした。

 

AD児の母親と非AD児の母親間で、睡眠時間(補正後オッズ比[AOR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.90~1.32)、早朝早期覚醒(同:1.16、95%CI:0.93~1.46)は、同様でした。

それとは対照的に、AD児の母親は、児に喘息および/またはアレルギー性鼻炎が併存しているか否かにかかわらず、入眠困難(同:1.36、95%CI:1.01~1.83)、睡眠不足(同:1.43、95%CI:1.24~1.66)、日中の疲労(同:1.41、95%CI:1.12~1.78)の報告が多い傾向がみられました。
すべての評価について、児のAD重症度が高いほど母親の睡眠アウトカムは不良でした。この関連の大きさ/有意性は、児の睡眠障害について補正後も殆ど変わりませんでした。

以上から、AD児の母親は11年間ずっと入眠困難、睡眠不足、日中の疲労を訴えていることが示されました。

 

子どもの幸せと健やかな発達には、両親が身体的・精神的に健全であることが必要です。

我々もADの子どもたちを診療する際、母親の睡眠障害や疲労についても、もっと考えなければなりませんねw (小児科 土谷)