小児期の非HDLコレステロール(non-HDL-C)上昇と成人期の心血管イベントのリスクが関連するかどうか調べた論文です(JAMA. 2024 Apr 12; doi: 10.1001/jama.2024.4819.)。

Non–High-Density Lipoprotein Cholesterol Levels From Childhood to Adulthood and Cardiovascular Disease Events | Dyslipidemia | JAMA | JAMA Network

 

1970~96年にi3Cコンソーシアムの7件の前向きコホート(米国5件、フィンランド1件、オーストラリア1件)に登録された3~19歳の参加者4万2,324例のうち、小児期(3~19歳)および成人期(20~40歳)のnon-HDL-C値のデータがあり、所在または死因が確認でき、追跡終了時40歳以上であった5,121例を主な解析の対象としました(除外基準により、オーストラリアのコホートは除外。最終追跡調査は2019年に実施)。

主要アウトカムは、40歳以降の致死的および非致死的心血管イベント(2015~19年に調査)で、小児期および成人期のnon-HDL-C値の年齢・性特異的zスコア、および臨床ガイドライン推奨の脂質異常症カットオフ値によるカテゴリー別に関連を評価しました。

解析対象となった5,121例は、non-HDL-C値測定のための初回受診時の年齢中央値は10.7歳、女性60%、黒人15%でした。

 

その結果、40歳以降の平均追跡期間(8.9年)で、5,121例中147例に心血管イベントが発生していました。

小児期および成人期のnon-HDL-C値はいずれも心血管イベントのリスク上昇と関連しており、ハザード比(HR)はnon-HDL-C値zスコア1単位増加当たりそれぞれ1.42(95%信頼区間[CI]:1.18~1.70)、1.50(1.26~1.78)でした。小児期non-HDL-C値の影響は、成人期non-HDL-C値で調整すると減弱したが(HR:1.12、95%CI:0.89~1.41)、成人期non-HDL-C値の影響は小児期non-HDL-C値で調整しても大きなままでした(HR:1.41、95%CI:1.14~1.74)。小児期から成人期のzスコアの変化で調整した場合、小児期non-HDL-C値の影響は大きなままで(HR:1.58、95%CI:1.30~1.92)、zスコアの変化(増加)は独立した予測因子でした(HR:1.41、95%CI:1.14~1.74)。

 

また、小児期および成人期に正常なnon-HDL-C値であった人と比較し、小児期から成人期にかけてnon-HDL-C高値の脂質異常症を発症した人は心血管リスクが有意に高く(HR:2.17、95%CI:1.00~4.69)、小児期から成人期まで持続的にnon-HDL-C高値の脂質異常症であった人はそのリスクがさらに倍増していたことがわかりました(HR:5.17、95%CI:2.80~9.56)。尚、小児期にnon-HDL-C高値の脂質異常症があったものの、成人期までには正常範囲内に改善できた人では、有意なリスク上昇は認められませんでした。(HR:1.13、95%CI:0.50~2.56)。

 

以上から、小児~成人期まで、持続的に非HDLコレステロール(non-HDL-C)高値の脂質異常症がある人は心血管イベントのリスクが高く、成人までにnon-HDL-C値が改善できた人は脂質異常症が無かった人と心血管リスクは同程度であることが分かりました。

 

心血管イベントを予防する観点から小児期におけるnon-HDL-C上昇を予防・軽減する必要がありそうです。見附市の子ども達も生活習慣病検診を受けていると思うので、結果が帰ってきたら注目してみると良いでしょう。 (小児科 土谷)