飛行機内でのマスク着用は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染予防に有効なのでしょうか?

IJERPH | Free Full-Text | The Risk of Aircraft-Acquired SARS-CoV-2 Transmission during Commercial Flights: A Systematic Review (mdpi.com)

 

PubMed、Scopus、Web of Scienceを使用し、2020年1月24日~2021年4月20日に発表されたCOVID-19と航空機感染に関連する研究のうち、SARS-CoV-2感染の最初の感染者がいることが確認されていて、フライト時間が明示されているものを対象としました(抽出されたデータには、フライトの特徴、乗客数、感染ケース数、フライト時間、マスクの使用状況が含まれた)。フライト時間は、短距離(3時間未満)、中距離(3~6時間)、長距離(6時間超)に区分し、フライト時間と機内でのウイルス感染率の関係を負の二項回帰モデルを用いて分析しました。

 

その結果、15件の研究が解析対象となりました(これらの研究には合計50便のデータが含まれた)。


50便のうち、26便が短距離(2~2.83時間)、12便が中距離(3.5~5時間)、12便が長距離(7.5~15時間)でした(長距離の6便はマスク必須であった)。
50便のうち、35便では機内での感染は認められませんでした(短距離20便、中距離7便、長距離8便)。マスク必須の長距離の6便ではすべて機内での感染はありませんでした。


15便で1 件以上の機内感染が報告され、感染率は中央値0.67(四分位範囲[IQR]:0.17~2.17)、短距離では0.50(IQR: 0.21~0.92)、中距離では0.29(IQR:0.11~1.83)、長距離では7.00(IQR:0.79~13.75)でした。いずれもマスクが強制でない短距離、中距離、長距離のフライトの機内感染リスクを比較したところ、短距離フライトに比べて、中距離は4.66倍(95%信頼区間[CI]:1.01~21.52、p<0.0001)、長距離は25.93倍(95%CI:4.1~164、p<0.0001)の感染リスク増加と関連していました。フライト時間が1時間長くなるごとに、罹患率が1.53倍(95%CI:1.19~1.66、p<0.001)増加していたことが分かりました。

以上から、フライト時間が長くなるほど、機内でのSARS-CoV-2感染リスクが増加することが分かりました。特に、マスクを着用しない場合、感染リスクは顕著に高まるようです。一方、マスク着用は長時間のフライトにおいても感染リスクを抑制することが示されました。

 

このデータは、いわばリアルワールドのものです。

以前のコロナ禍で、飛行機内でのマスク着用に関してトラブルがあったことがありましたが、「感染予防」という観点から、機内ではマスク着用をしていた方が無難なようです。 (小児科 土谷)