HPVは子宮頸がんの原因であるため、女性の健康問題と考えられてきましたが、男性にもHPVを恐れる理由があります。今日は男性のHPV感染に関する話題(Frontiers in cellular and infection microbiology. 2024;14;1420307.)です。
205人の男性(年齢中央値:35歳)を対象に、生殖器系での高リスク型または低リスク型HPV感染と精液の質、酸化ストレス、炎症との関連について検討しました。対象者の精液サンプルを調べた結果、19.0%(39/205人)でHPV感染が確認されました。陽性サンプルからHPVの遺伝子型を割り出すことができた27人では、うち20人(74.0%)は少なくとも1種類の高リスク型HPVに、7人(26.0%)は低リスク型HPVに感染していたことが分かりました。対象者のうち、HPVも含め尿路病原菌が確認されず、膿精液症のなかった43人を対照としました。
解析の結果、高リスク型/低リスク型HPV感染者のいずれもにも、精液の質に有意な低下は認められなかったものの、高リスク型HPV感染者では低リスク型HPV感染者や対照と比べて、精子のアポトーシスや壊死が有意に多く、活性酸素種(ROS)陽性精子の割合も高いことが分かりました。また、高リスク型HPV感染者と低リスク型HPV感染者の精液に顕著な炎症は認められず、さらに高リスク型HPV感染者では、対照と比べて精液中の白血球と炎症性サイトカイン(IL-6およびIL-1β)レベルが低いことが分かりました。


以上から、高リスク型HPVに感染した男性は、酸化ストレスと尿生殖器の局所的な免疫反応の低下により、死滅する精子が増加することが分かりました。
男性でもHPV感染によって生殖機能に障害を受ける可能性があるみたいです。
男性への国内でもHPVワクチン接種に助成を出す自治体が年々増えているので、是非県内にもそういう自治体がひとつでも多く出てきたら良いな~と思います。これもある意味で、少子化対策! (小児科 土谷)

