long COVIDやワクチン接種後の副反応が女性に多い理由について調べた論文(Nature. 2024 Sep;633(8028):155-164.)を紹介します。
Immune system adaptation during gender-affirming testosterone treatment | Nature
最初に用語の説明。
文中に出てくるトランス男性とは出生時に女性とされたが、後にテストステロン療法を受け男性とされた人のことを指しています。
カロリンスカ研究所からトランス男性23人の縦断的解析が報告されました。
その結果、テストステロンによりⅠ型インターフェロン(IFN-I)応答が減少し、腫瘍壊死因子(TNF)応答が強化されることが分かりました。
具体的にはプラズマサイトイド樹状細胞(外界のウイルス侵入を感知し,抗ウイルス因子発現を誘導する初期応答を行う細胞)や単球でのIFN-I応答が抑制され、NK細胞や単球でのTNF,IL-6,IL-15の産生が増加し、NF-κBシグナル伝達経路が活性化されていました。
要するに、免疫応答が性ホルモンによって動的に調節されていることが示されたということです。
そのため、COVID-19における「性差」も性ホルモンで説明可能かもしれません。
- なぜ男性のCOVID-19感染者は死亡率が高いのか?
男性では、テストステロンによるIFN-I応答が抑制され、炎症性サイトカイン産生(TNFやIL-6)が増加、つまりサイトカインストームが生じやすく、男性の死亡リスクが高くなる - 女性でlong COVIDやワクチン接種後の副反応の頻度が高いのはなぜか?
女性では、IFN-I応答が強くウイルスの制御に役立つものの、強い免疫応答が慢性的な炎症や持続的な免疫活性を引き起こしやすく、long COVIDの原因となる可能性がある。同様に、IFN-I応答が強いためワクチン接種による免疫系活性化の度合いが高く、副反応も強い可能性がある
以前から、long COVIDやワクチン接種後の副反応が女性に多いことは指摘されていましたが、今回の論文はその答えに近づくものかもしれません。
今後のさらなる病態解明が待たれますねw (小児科 土谷)


