昨日はバレンタインばかり目立ってしまう2月14日でしたが、予防接種記念日でもあります。
1790(寛政2)年の2月14日に、秋月藩の藩医・緒方春朔が初めて天然痘の人痘種痘を行い成功させたことから、「予防接種は秋月藩から始まった」キャンペーン推進協議会が制定したものです。
そこで一日ずれましたが、今日は予防接種に関連した内容にします。
新型コロナだけでなく、麻疹などのその他のワクチン接種にも反対する人々が「感染症は罹る時にちゃんと罹り、それを上手く経過させることで体を丈夫にする」といった内容を拡散されることがあります。
しかし、それは決して一般化できるようなことではありません。
時代や感染症の種類、子どもの健康状態によって大きく異なります。
例をあげると、1875年フィジー諸島では麻疹によって数週間のうちに約4万人もの人が死亡しました。
衛生環境が良くない場所で麻疹が流行すると、元の感染症を契機にそれ以外の感染症で多くの人が死亡することがあるのです。アメリカでも、20世紀初頭ではジフテリアによって約12,000人の子どもが死亡し、風疹によって約20,000人の子どもが視力障害、難聴、知的障害などの健康被害を被り、ポリオによっては約15,000人もの子どもが麻痺症状を示し、約1,000人が死亡しました(”Deadly Choices”, P.A. Offit, 2010)。
その後、ワクチン開発とともに予防接種が拡充されていくなかで、これらの感染症で被害を受ける子どもたちは激減し、ワクチン接種者では死亡者はほぼゼロレベルまで減少しました(未接種者ではそうではなかったという事実があります)。
わざわざ病気にかかって免疫を得ようとすると、大変なことになる可能性があること、感染症にはいまだ治療薬がないものがあること、ワクチン接種なしでこれらの感染症による健康被害は100%防げない、ということを知っておきましょう。
一般的に「感染症は罹る時にちゃんと罹り、それを上手に経過させる」ということは、うまくいく保証はありません。ロシアンルーレットのように一定の確率で望まないことが起きてしまいます。そういうリスクを未然に防ぐために、現在ワクチン接種が広く行われているのです。
ワクチンはゼロリスクではありませんが、ワクチン接種によるメリットとデメリットをよく考え、賢い選択をして頂ければと思います。 (小児科 土谷)