妊娠中の母親の抑うつや不安、唾液中オキシトシン濃度が、子どもに対する情緒的な絆(ボンディングと呼びます)に影響する可能性があることが報告されました(Archives of women’s mental health. 2024 Feb 26; doi: 10.1007/s00737-024-01441-5.)。

Primiparas’ prenatal depressive symptoms, anxiety, and salivary oxytocin level predict early postnatal maternal–infant bonding: a Japanese longitudinal study | Archives of Women’s Mental Health (springer.com)

 

京都府の1つの医療機関で、初産婦、20~40歳、精神疾患の既往がないなどの基準を満たす妊婦を対象に、妊娠中のメンタルヘルスやホルモン濃度と産後のボンディングとの関連を検討しました。妊娠中期に抑うつと不安の状態を評価し、血中コルチゾール濃度と唾液中オキシトシン濃度を測定しました。ボンディングは、「赤ちゃんをいとしいと感じる」「赤ちゃんのことが腹立たしくいやになる」などの質問(10項目)からなる「赤ちゃんへの気持ち質問票(MIBS-J)」を用いて、産後2~5日、1カ月、3カ月の時点で評価しました。なお、MIBS-Jは得点が低いほどボンディングが良好であることを示します。

 

評価対象者66人(平均年齢31.8±3.8歳)のうち、妊娠中に抑うつのあった人(エジンバラ産後うつ病質問票による評価で9点以上)は14人(21.2%)、不安のあった人(状態・特性不安検査による評価で42点以上)は19人(28.8%)でした。ホルモン濃度の中央値(四分位範囲)は、コルチゾールが21.0(16.6~24.1)μg/dL、オキシトシンが30.4(19.2~114.2)pg/mLでした。

 

ボンディングの指標であるMIBS-Jの得点の中央値(四分位範囲)は、産後2~5日が2.00(1.00~3.00)、1カ月が1.00(0.00~3.00)、3カ月が0.00(0.00~2.00)で、ボンディングは産後2~5日および1カ月の時点では低く、3カ月の時点で有意に高くなることが分かりました。

MIBS-Jの得点に関連する要因の検討では、産後2~5日で、産後の社会的支援、妊娠中の抑うつ、不安、オキシトシン濃度の4つが、MIBS-Jの得点と有意に関連していることが明らかとなりました。産後1カ月の時点では、世帯収入、流産歴、産後の社会的支援、妊娠中の不安の4つが有意に関連していました。3カ月の時点では、有意な関連が見られたのは産後の社会的支援のみでした。妊娠中のコルチゾール濃度に関しては、いずれの時点でもMIBS-Jとの有意な関連は認められませんでした。

以上から、妊娠中の抑うつ、不安、唾液中オキシトシン濃度の低さは産後2~5日のボンディングの低下を予測し、妊娠中の不安は1カ月時点のボンディングの低下を予測すること、産後の社会的支援の有無が全ての時点でボンディングの高さと関連していたことが分かりました。

 

妊娠中に母親の抑うつや不安、唾液中オキシトシン濃度をスクリーニングすることで、ボンディング障害のリスクを評価し、早期に介入できる可能性があります。

ボンディングの改善は子ども虐待の防止にもつながるため重要です。

 

産後の社会的支援の拡充とともに、こういったポイントをスクリーニングして早期に介入する体制が一日も早く整ってくれることを願うばかりです。 (小児科 土谷)