成人では、適度な運動が心血管の健康増進に役立つことが広く認識されています。

小児期の運動習慣が心臓にどんな影響を与えるのか?について調べた論文(European journal of preventive cardiology. 2024 May 07; pii: zwae129.)を紹介します。

Accelerometer-based sedentary time and physical activity from childhood through young adulthood with progressive cardiac changes: a 13-year longitudinal study | European Journal of Preventive Cardiology | Oxford Academic (oup.com)

 

イギリスの子どもとその親を対象に行われている出生コホート研究(ALSPAC)のデータを用いた二次分析として行われた研究です。平均年齢11.75±0.24歳の子ども1,682人(女児62.7%)を約13年間にわたって追跡しました。日常の運動量は、11歳、15歳、24歳の時点で加速度計を4~7日間、身に着けて生活してもらい把握しました。心臓の形態と機能については、17歳、24歳の時点で行った心エコー検査によって、左室心筋重量係数(LVMI)や左室拡張能などを評価しました。

 

研究参加者全体の座位行動時間を平均すると、ベースライン(11歳時点)が6時間だったものが、24歳時点では9時間となり、13年間で3時間増加していました。LVMIは、17歳から24歳の7年間で平均3g/m2.7上昇していました。

 

運動量とLVMIの変化との関連性を解析した結果、小児期からの座位行動の累積時間の長さは、性別や肥満の有無、血圧レベルにかかわらず、LVMIの上昇幅が最大40%増えることと関連していました。その一方、小児期からの軽強度運動の累積時間の長さは、LVMIの上昇幅が最大49%減ることと関連しており、軽強度運動の累積時間が長いと、左室拡張能などの指標も良好でした。

尚、小児期からの中~高強度運動の累積時間が長いことは、LVMIの上昇幅が最大5%増えることと関連していましたが、これは運動負荷に伴う生理的な変化と考えられました。

以上から、子どもの頃の運動量と若年成人期の心臓の大きさとの間に有意な関連があり、運動不足だった子どもは成人後に心肥大が見られる可能性があることが分かりました。

 

軽強度の運動を行うことが座位行動の弊害を打ち消す効果的な手段となりそうです。

毎日3~4時間程度の運動を続けることは、子どもにとって、それほど難しいことではありません。

小さな頃からの運動習慣、大切ですねw (小児科 土谷)