ロコモとは、ロコモティブシンドロームのことです。
簡単にいうと、運動器の障害により起立や歩行などの移動機能が低下した状態のことです。
高齢者だけでなく、若年者にも一定の割合でロコモの兆候が見られると報告されていることもあり、今回、日本の大学生を対象にしたロコモに関する論文( BMC musculoskeletal disorders. 2024 May 10;25(1);366. pii: 366.)を読んでみました。

医療・福祉系の大学に通う大学生413人(平均年齢19.1±1.2歳、男性192人)を対象とする横断研究を2023年4月~7月にかけて実施しました。
日本整形外科学会の基準に準拠し、立ち上がりテスト(下肢筋力)、2ステップテスト(歩幅)、ロコモ25(体の状態・生活状況)の3つの「ロコモ度テスト」を行い、ロコモが始まっている「ロコモ度1」、ロコモが進行した「ロコモ度2」、ロコモがさらに進行して社会参加に支障をきたしている「ロコモ度3」に該当するかどうかを判定しました。筋骨格系・身体組成の評価や、身体活動・栄養摂取習慣の調査などを行い、ロコモと関連する要因も男女別に検討しました。
その結果、413人中86人(20.8%)がロコモと判定され、そのうちロコモ度1が83人、ロコモ度2が3人でした。性別の内訳は男性が31人(16.1%)、女性が55人(24.9%)であり、ロコモの有病率は女性の方が有意に高かったことが分かりました。
男性で、ロコモの人とロコモでない人の間で、片脚立ち(5秒以上)ができない人の割合および位相角(骨格筋の質の指標)に有意な差が見られた一方、女性の場合は、体脂肪量、体脂肪率、骨格筋量指数(SMI)、運動器の痛み、握力に有意差が認められました。
ロコモであることを従属変数、ロコモの人とロコモでない人で有意差のあった項目(女性の体脂肪量は除外)を独立変数とする二項ロジスティック回帰分析を行い、ロコモと関連する要因を解析した結果、男性では片脚立ちができないこと(オッズ比7.326、95%信頼区間2.035~26.370)、女性では運動器の痛み(同2.985、1.546~5.765)および高い体脂肪率(同1.111、1.040~1.186)が、ロコモと有意に関連していることが明らかとなりました。
以上から、大学生(本邦)のロコモティブシンドローム(ロコモ)の有病率は20%を超えていることが分かりました。ロコモと関連する要因も男性と女性で違いがあることが分かりました。
健康寿命を延ばすためには、ロコモの予防策を若いうちから実施したほうが良いのかもしれません。
それにしても、生活習慣の質がロコモの関連要因として示されなかったのは意外でしたw (小児科 土谷)


