今回は皆さんもよく目にするキシリトール(キシリトールは砂糖よりもカロリーの低い糖アルコールの一種で、あめやガム、焼き菓子、歯磨き粉などによく使われています)についての話題(European heart journal. 2024 Jun 06; pii: ehae244.)です。
選択的心機能評価を受ける発見コホート1,157人から夜間断食後に採取した血漿サンプルを用いて非標的メタボロミクスを行いました。
その結果、暫定的にキシリトールと見なしたポリオールの循環レベルが、3年間の主要心血管イベント(MACE)の発生リスクと関連することが明らかになりました。
次に、発見コホートとは重複しない検証コホート(2,149人)の血漿サンプルを用いて、安定同位体希釈液体クロマトグラフィータンデム質量分析を実施したところ、キシリトールとMACEの発生リスクとの関連性が確認されました。血液中のキシリトール濃度に応じて対象者を3群に分けた場合、最も高い群のMACEの発生リスクは最も低い群の1.57倍と推定されました。
補完的研究として、分離されたヒト血小板、多血小板血漿、全血、および動物モデルを用いて、キシリトールが血小板の反応性および体内の血栓形成に与える影響を調べた結果、空腹時血漿中のキシリトールが、血小板の反応性および体内の血栓形成の複数の指標を増強することが示されました。そして、健康成人10名を対象に、キシリトールを甘味料とする飲料の摂取が血小板の機能にもたらす影響を検討したところ、全対象者で血漿中のキシリトール濃度が顕著に上昇し、血小板の反応性に関する複数の機能的指標が増強したことが確認されました。

以上から、キシリトールの摂取量が多いと、心筋梗塞や脳卒中などの主要心血管イベント(MACE)の発生リスクが高まる可能性のあることが分かりました。
「キシリトール入りの歯磨き粉を捨てろ!」というわけではありませんが、高濃度のキシリトールを含む製品を摂取することで血栓関連イベントの発生リスクが高まる可能性があることは知っておきましょう。 (小児科 土谷)


