妊娠中のオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 LCPUFA、魚油)サプリメント摂取と出生児のアトピー性皮膚炎リスクの関連性について調べた論文( JAMA dermatology. 2024 Aug 28; doi:10.1001/jamadermatol.2024.2849.)を紹介します。

「Danish Copenhagen Prospective Studies on Asthma in Childhood 2010」の事前に規定された2次解析で、出生コホートの母子ペアを対象とし、出生児が10歳になるまで前向きに追跡調査を行いました。
妊娠中のn-3 LCPUFAサプリメント摂取と小児アトピー性皮膚炎の関連について、全体および母親のCOX1遺伝子型別に検討しました。本試験では、母親と出生児のCOX1遺伝子型を確認し、出生児が1歳になった時点で尿中エイコサノイドを測定しました。本試験は2019年1月~2021年12月の期間に実施し、データ解析は2023年1~9月に行いました。
合計736例の妊娠24週の妊婦を、1日2.4gのn-3 LCPUFA(魚油)サプリメントを摂取する群(介入群)またはプラセボ(オリーブオイル)を摂取する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、出産1週後まで摂取を継続させました。主要アウトカムは、全体および母親のCOX1遺伝子型別にみた10歳時までの小児アトピー性皮膚炎リスクとしました。
その結果、10歳時のフォローアップを完了した出生児は635例(91%、女子363例[57%])で、母親と共に、介入群321組(51%)、対照群314組(49%)が解析に含まれました。
妊娠中のn-3 LCPUFAサプリメントの摂取は、出生児の1歳時点における尿中トロンボキサンA2代謝物量と有意な負の関連があり(β:-0.46、95%信頼区間[CI]:-0.80~-0.13、p=0.006)、尿中トロンボキサンA2代謝物量はCOX1 rs1330344遺伝子型とには有意な正の関連が認められました(Cアレル当たりのβ:0.47、95%CI:0.20~0.73、p=0.001)。
10歳時点までの小児アトピー性皮膚炎発症とn-3 LCPUFAサプリメント摂取(ハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.76~1.33、p=0.97)、母親のCOX1遺伝子型(同:0.94、0.74~1.19、p=0.60)との間には、関連性は認められなかったものの、n-3 LCPUFAサプリメント摂取と母親のCOX1遺伝子型には有意な交互作用がみられました(交互作用のp<0.001)。
TT遺伝子型を有する母親の出生児のアトピー性皮膚炎のリスクは、対照群よりも介入群で有意に低く(390組[61%]のHR:0.70、95%CI:0.50~0.98、p=0.04)、CT遺伝子型を有する母親の出生児では、介入群のアトピー性皮膚炎のリスク低下はみられず(209組[33%]のHR:1.29、95%CI:0.79~2.10、p=0.31)、むしろCC遺伝子型を有する母親の出生児で有意なリスク上昇が認められたことがわかりました(37組[6%]のHR:5.77、95%CI:1.63~20.47、p=0.007)。アトピー性皮膚炎発症について、n-3 LCPUFAサプリメント摂取と出生児のCOX1遺伝子型には、有意な交互作用がみられました(交互作用のp=0.002)。
以上から、妊娠中のオメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3 LCPUFA、魚油)サプリメント摂取と出生児のアトピー性皮膚炎リスクとの関連性は、母体のシクロオキシゲナーゼ-1(COX1)遺伝子型によって異なることが示されました。
全ての妊婦というわけではありませんが、TT遺伝子型を有する妊婦にサプリメントを摂取させることで、出生児のアトピー性皮膚炎の発症を予防することが出来るかもしれません。
今日は魚油の意外な効能について簡単に紹介させて頂きましたw (小児科 土谷)


