今回はあんまり医療と関係ありませんが、非常に示唆に富む論文(Proc Natl Acad Sci U S A. 2025 Jan 7;122(1):e2414274121.)を紹介したいと思います。

Comparing cooperative geometric puzzle solving in ants versus humans – PMC

 

アリと人間にまったく同じ幾何学パズルを解かせています。

T字型の物体を2つの狭いスリットを通して出口へ運ぶという課題で、アリ用の物体には餌の匂いをつけ、巣に持ち帰る対象としています。サイズだけをアリと人間に合わせてスケールし、1人(1匹)、小集団、大集団での成績を比較しました。さらに人間では「話してよいグループ」と「話してはいけないグループ」に分けています。


その結果、アリは集団になるほど成績が良くなりました。壁に沿って動き続けるなどの行動が自然に生、結果として効率よく正解に到達していました(個体にはない「集合的な記憶」が生まれていると解釈されています)。

人間は1人のときが最も効率的でした。話せるグループは1人と同程度の成績でしたが、話せないグループは1人よりも成績が悪くなりました。出口に対して遠回りすべき場面でも、直感的で誤った方向を選びやすい傾向が見られました。これは心理学でいう groupthink(集団浅慮)に近い現象で「みんなと同じでいること」が目的になりすぎて「正しく考えること」をやめてしまう集団心理です。

 

要するに、「アリは単純な個体だが集まると賢くなる。人間は賢い個体であっても、話し合えない集団では賢さを失う」。


人間のチームの質は、個々のメンバーの賢さではなく、「対話の質」によって決まります。

職場でケンカばかりしている人たちに共通していることの1つに、対話量の不足があるように思います。

対話の力を社会(職場)や世界があらためて認識し、争いのない平和な未来へとつながって欲しいと思います。 (小児科 土谷)