小児期には沢山のワクチンを接種します。

その予防接種の長期的な効果についての報告(Lancet. 2024 May 02; pii: S0140-6736(24)00850-X.)です。

Contribution of vaccination to improved survival and health: modelling 50 years of the Expanded Programme on Immunization – The Lancet

 

拡大予防接種計画(EPI)発足50周年を期に、14種の病原菌に関して、ワクチン接種による世界的な公衆衛生への影響の定量化を試みました。モデル化した病原菌について、1974年以降に接種されたすべての定期および追加ワクチンの接種状況を考慮し、ワクチン接種がなかったと仮定した場合の死亡率と罹患率を年齢別のコホートごとに推定しました。

次いで、このアウトカムのデータを用いて、この期間に世界的に低下した小児の死亡率に対するワクチン接種の寄与の程度を評価しました。

 

その結果、1974年6月1日~2024年5月31日に、14種の病原菌を対象としたワクチン接種計画により、1億5,400万人が死亡を回避出来たと推定されました。このうち1億4,600万人は5歳未満の小児で、1億100万人は1歳未満でした。これは、ワクチン接種が90億年の生存年数と、102億年の完全な健康状態の年数(回避された障害調整生存年数[DALY])をもたらし、世界で年間2億年を超える健康な生存年数を得たことを意味していた。

 

また、1人の死亡を回避するごとに、平均58年の生存年数と平均66年の完全な健康が得られ、102億年の完全な健康状態のうち8億年(7.8%)はポリオの回避によってもたらされ、全体としては、この50年間で救われた1億5,400万人のうち9,370万人(60.8%)は麻疹ワクチンによるものでした。

世界の乳幼児死亡率の減少の40%はワクチン接種によるもので、西太平洋地域の21%からアフリカ地域の52%までの幅が認められました。この減少効果への相対的な寄与の程度は、EPIワクチンの原型であるBCG、3種混合(DTP)、麻疹、ポリオワクチンの適応範囲が集中的に拡大された1980年代にとくに高かったことが分かりました。

また、1974年以降にワクチン接種がなかったと仮定した場合と比較して、ワクチン接種を受けた場合は、2024年に10歳未満の小児が次の誕生日まで生存する確率は44%高く、25歳では35%、50歳では16%高くなりました。このワクチン接種による生存可能性の増加は成人後期まで観察されました。

 

一般的に、ワクチン接種で得られる恩恵を直接肌で感じることは少ないと思いますが、実際には多くの命を救っています。

小児期のワクチン接種は種類も多くて大変ですが、とても大事なことなので、きちんと予防接種を受けましょうねw (小児科 土谷)