塩分摂取は熱中症の予防に重要です。
どうやら熱中症予防の際の塩分摂取にはタイミングが大切らしいです(PloS one. 2024;19(1);e0296388. pii: e0296388.)。
福島県の消防署で24時間勤務を行う20歳以上の男性消防士28人(平均年齢31.0±7.7歳、平均BMI 25.0±3.1kg/m2)を対象として、塩分摂取のタイミングと熱中症の関連を検討する研究を行いました(熱中症のリスクを高める高血圧や糖尿病の既往歴のある人は対象者から除外)。
対象者は2021年7月~9月の間に屋外訓練を行いました。訓練中、水および市販の塩分タブレット(塩分量0.108g)を自由に摂取し、摂取量とタイミングを記録しました。訓練前後に体重測定を行ったほか、質問紙を用いて、熱中症の自覚症状(手足の筋肉痛、筋けいれん、強い口渇、尿量減少、頭痛など)、睡眠、飲酒量などを評価しました。
その結果、延べ訓練日数250日間に、熱中症症状は28件発生していました。多く見られた症状の発生数は、1.5%以上の体重減少が10件、強い口喝が9件、めまいが8件、不快感が7件、頭痛が5件、手足の筋肉痛が2件でした。塩分摂取量の中央値(四分位範囲)は12.6(10.2~14.7)g/日でしたが、塩分摂取量は熱中症症状の発生とは関連していませんでした。
次に、塩分摂取のタイミングとの関連を分析した結果、塩分摂取なしと比較して、訓練前の塩分摂取(オッズ比5.893、95%信頼区間1.407~24.675)および訓練前+訓練中の塩分摂取(同22.889、4.276~122.516)は、熱中症症状の発生と有意に関連していることが明らかとなりました。一方、訓練中のみの塩分摂取や、睡眠、飲酒、水分摂取は、熱中症症状と有意な関連は認められませんでした。
以上から、(消防士対象の研究なので一般化するには注意が必要ですが)不適切なタイミングで塩分を摂取することにより、熱中症のリスクが高まる可能性があることが分かりました。
塩分摂取の適切なタイミングや摂取量について、まだ定まっていない部分もありますが、これからの熱中症シーズン頭の片隅に覚えておきましょうw (小児科 土谷)