これまで何となく「そうなんだろうな」と思っていたことの論文(Scientific reports. 2024 Jul 22;14(1);15843.)を見つけましたw
それは「犬が人間がストレスを感じているかを嗅ぎ分け、それが犬の感情や行動選択に影響する」というものです。

今回、人間よりも高性能の嗅覚を持つ犬は「人間の感情を嗅覚で感じ取り、それに応じた行動をとるのではないか」と考え、18頭の犬を対象に実験を行いました。
実験は、それぞれ7日程度の間隔を空けて実施する3つのセッションで構成されていました。
最初のセッション1では、無臭サンプルを用いて、ある場所に置かれたボウルの中にはおやつが入っているが別の場所に置かれたボウルの中には何も入っていないことを犬に学ばせました。
セッション2と3では、ストレスのかかった状態とリラックス状態にある人から採取した息と汗のサンプル(それぞれ、「ストレスサンプル」「リラックスサンプル」とする)に犬を曝露させた上で、おやつ入りのボウルと空のボウルの間の曖昧な位置(おやつが入っているボウルに近い位置、おやつの入っているボウルと空のボウルの中間、空のボウルに近い位置)に置かれたボウルに対して犬がどのように行動するのかを観察しました。
セッション2では半数の犬にストレスサンプル、残りの半数にリラックスサンプルを用い、セッション3ではその逆としました。
犬をサンプルに曝露させる前には必ずおやつ入りのボウルと空のボウルの位置を学ばせる訓練を行いました。犬が曖昧な位置に置かれたボウルに素早く近付いた場合は、「ボウルの中に食べ物があるかもしれない」という「楽観的」な心境にあり、逆に、ゆっくり近付いた場合には、「多分、中におやつは入ってない」という「悲観的」な心境にあると見なしました。
その結果、セッション3でストレスサンプルのにおいに曝露した犬は、無臭のサンプルに曝露した場合と比べて、曖昧な位置(空のボウルに近い場所)に置かれたボウルへ向かおうとする意欲が有意に低下することが明らかになりました(犬は人間のストレスのにおいを嗅ぎ取ると、エネルギーを節約して失望を避けるというリスク回避行動を取る可能性があることを示唆している)。このような「悲観的」な反応は、リラックスサンプルに曝露させた場合には見られませんでした。また、おやつ入りのボウルと空のボウルの位置に関する犬の学習は訓練を重ねるごとに向上しましたが、セッション2と3の間では、セッション3でストレスサンプルに曝露した場合にのみ顕著な向上が認められました。これらの結果から、においが学習に影響を及ぼしていることがうかがわれました。
以上から、犬はストレスのかかった見知らぬ人のにおいを嗅ぎ分け、それが犬の感情、報酬の知覚、学習能力に影響を与えるということが分かりました。
地元で犬を散歩している時、自分のストレスがリードを介して犬に伝わっているような気が何となくしていましたが、どうやら空気(臭い)を介してストレスが犬に伝わる可能性もあるみたいです。なるほど。 (小児科 土谷)


