院長先生のブログ
子どもの朝食欠食も糖尿病リスクにつながる
朝食を食べない成人は2型糖尿病のリスクが高いことは知られていますが、同じことが子どもにも当てはまるか調べた論文(Frontiers in endocrinology. 2023;14;1051592. pii: 1051592.)を紹介します。
足立区内の小中学生対象に行われた「A-CHILD Study」の中学生のデータを用いて、朝食欠食と糖尿病前症リスクとの関連を検討しました。
解析対象は、2016年、2018年、2020年の調査に回答した中学校7校の2年生、計2,090人から、データ欠落者、および、糖代謝レベルを判定するHbA1cへの影響を考慮して、貧血(ヘモグロビンが12g/dL未満)に該当する生徒を除外した1,510人です。
朝食を「毎日食べる」と回答したのは83.6%で、残りの16.4%は「時々食べる」、「ほとんど食べない」、「全く食べない」であり、それらを朝食欠食群と定義しました。糖尿病前症をHbA1c5.6~6.4%の場合と定義すると、3.8%が該当しました。糖尿病の診断基準であるHbA1c6.5%以上の生徒は認められませんでした。
糖尿病前症の有病率は、朝食を毎日食べる群が3.5%、朝食を欠食する群では5.6%でした。多変量解析で性別、世帯収入、糖尿病の家族歴を調整後、朝食欠食群の生徒は毎日食べる生徒に比べて、糖尿病前症に該当する割合が2倍近く高いことが明らかになりました〔オッズ比(OR)1.95(95%信頼区間1.03~3.69)〕。
BMIで層別化したサブグループ解析では、BMIが平均から1標準偏差以上上回っている生徒の場合(全体の15.1%)、朝食を欠食することと糖尿病前症に該当することに、より強固な関連性があることが分かりました〔OR4.31(同1.06~17.58)〕。その一方、BMIの平均からの逸脱が1標準偏差未満の群では、朝食欠食による糖尿病前症の有意なオッズ比上昇は観察されませんでした〔OR1.62(0.76~3.47)〕。
また、朝食欠食の習慣のある生徒は、起床時刻が遅く、平日の睡眠時間が長く、運動をする頻度が低いという有意差が見られた。なお、前記の多変量解析の調整因子に、起床時刻と運動頻度を追加した解析の結果も同様であり、朝食を欠食する生徒の糖尿病前症に該当する割合は約2倍でした〔OR2.01(1.04~3.89)〕。
以上から、交絡因子調整後も、中学生の朝食の欠食は糖尿病前症と関連しており、この関連はBMIの高い生徒で顕著であることが分かりました。
子どもの食習慣は早い段階で身に付き、成人後に引き継がれる可能性が高いことから、子どもが幼い頃から毎日朝食を食べる習慣を身につけることは大切です! (小児科 土谷)