これからインフルエンザ予防接種も始まり、今年もインフルエンザシーズンがやってきます。
Lancetに、中国とアメリカの研究者が共同で、インフルエンザ入院患者に対する抗インフルエンザ薬の治療効果について、これまでに発表された論文のメタ解析が行われていたので紹介します。
2023年9月20日までに発表された、インフルエンザの入院患者(疑い例または検査で確認された)を対象とし、直接作用型インフルエンザ抗ウイルス薬をプラセボ、標準治療、または他の抗ウイルス薬と比較した無作為化対照試験を、MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Health、Epistemonikos、ClinicalTrials.govで系統的に検索しました。注目した主要な転帰は、症状の軽減までの時間、入院期間、集中治療室への入院、侵襲的人工換気への進行、人工換気の期間、死亡率、退院先、抗ウイルス薬耐性の出現、副作用、治療に関連する副作用、および重篤な副作用でした。エビデンスを要約するためネットワークメタアナリシスを実施し、GRADE(推奨評価、開発および評価のグレーディング)アプローチを使用して証拠の確実性を評価しました。
その結果、検索で特定された11,878件の記録のうち、8つの試験(参加者1424人、平均年齢36~60歳、平均または中央値の年齢を報告した試験に基づく;男性患者は43~78%)がこの系統的レビューに含まれ、そのうち6つがネットワークメタアナリシスに含まれました。
オセルタミビル、ペラミビル、またはザナミビルの死亡率に対する効果は、プラセボまたはプラセボなしの標準治療と比較して、季節性および動物由来インフルエンザに対して非常に低い確実性でした。
プラセボまたは標準治療と比較して、オセルタミビル(平均差 –1.63日、95% CI –2.81から–0.45)およびペラミビル(–1.73日、–3.33から–0.13)によって季節性インフルエンザの入院期間が短縮されるという低い確実性の証拠が得られました。
標準治療と比較して、オセルタミビル(0.34日、–0.86から1.54;低い確実性の証拠)またはペラミビル(–0.05日、–0.69から0.59;低い確実性の証拠)による症状の軽減までの時間にほとんど差は認められませんでした。
オセルタミビル、ペラミビル、ザナミビルにおける副作用や重篤な副作用に差は認められませんでした。(非常に低い確実性の証拠)。
以上から、インフルエンザで入院している患者に対して、オセルタミビルおよびペラミビルは、標準治療またはプラセボと比較して入院期間を短縮する可能性があるものの、その証拠の確実性は低いということが分かりました。そして、この論文では死亡率やその他の転帰(ex. ICU入室など)に与える影響に至っては、ランダム化比較試験の結果が不足していて、はっきりとしたことを断言できないと結論付けられています。
現在の抗インフルエンザウイルス薬には、「インフルエンザの重症化を食い止める特効薬!」といえるほど、有益な効果は確認されていないということになります。
薬剤を過信せず、シーズン到来前にきちんと予防接種を受けること、シーズン中は感染対策を怠らないこと、出来ることからひとつずつ積み重ねていきましょう。 (小児科 土谷)


