COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎および関連のない心筋炎に罹患後の心血管合併症の発生状況などについて検討する目的で行ったフランスのコホート研究( JAMA. 2024 Aug 26; pii: e2416380.)を紹介します。
COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎および関連のない心筋炎に罹患後の心血管合併症の発生状況と、医療処置や薬剤処方などによる疾患管理について検討する目的でコホート研究を行いました。
フランス国民健康データシステムを用いて、2020年12月27日~2022年6月30日にフランスで心筋炎により入院した12~49歳の患者4,635例のデータを収集しました。
これらの患者を、ワクチン接種後心筋炎(COVID-19 mRNAワクチン接種から7日以内、558例[12%])、COVID-19罹患後心筋炎(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2[SARS-CoV-2]感染から30日以内、298例[6%])、従来型心筋炎(COVID-19 mRNAワクチン接種やSARS-CoV-2感染とは関連のない心筋炎、3,779例[82%])に分類しました。
主要アウトカムは、初回入院から18ヵ月間における心筋心膜炎による再入院、心筋心膜炎以外の心血管イベント、全死因死亡と、これらのイベントの複合アウトカムとし、退院後の医療管理(心臓画像検査、心血管治療[β遮断薬、レニン-アンジオテンシン系作用薬]、冠動脈検査[冠動脈造影、CT検査]、トロポニン検査、ストレス検査など)について評価を行いました。
その結果、ワクチン接種後心筋炎群は、COVID-19罹患後心筋炎群および従来型心筋炎群に比べ年齢が若く(平均年齢25.9[SD 8.6]歳、31.0[10.9]歳、28.3[9.4]歳)、男性が多かった(84%、67%、79%)ことが分かりました。
18ヵ月時の複合アウトカムの標準化発生率は、従来型心筋炎群が13.2%(497/3,779例)であったのに比べ、ワクチン接種後心筋炎群は5.7%(32/558例)と低く(重み付けハザード比[wHR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.36~0.86)、COVID-19罹患後心筋炎群は12.1%(36/298例)であり、従来型と同程度でした(1.04、0.70~1.52)。
心筋心膜炎による再入院(ワクチン接種後心筋炎群と従来型心筋炎群の比較:wHR 0.75[95%CI:0.40~1.42]、COVID-19罹患後心筋炎群と従来型心筋炎群の比較:1.07[0.53~2.13])および心筋心膜炎以外の心血管イベント(0.54[0.27~1.05]、1.01[0.62~1.64])は、いずれも差を認めませんでした。
全死因死亡は、ワクチン接種後心筋炎群が1例(0.2%)、COVID-19罹患後心筋炎群が4例(1.3%)、従来型心筋炎群は49例(1.3%)でみられました。
そして、ワクチン接種後心筋炎群およびCOVID-19罹患後心筋炎群の退院から18ヵ月間の医療処置(心臓画像検査、トロポニン検査、ストレス検査)および薬剤処方の標準化された頻度は、従来型心筋炎群と同様の傾向を示しました。
以上から、従来型の心筋炎患者と比較して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後に心筋炎を発症し入院した患者は心血管合併症の頻度が高いのに対し、COVID-19のmRNAワクチン接種後に心筋炎を発症した患者は逆に心血管合併症の頻度が従来型心筋炎患者よりも低いことが分かりました。
COVID-19のmRNAワクチンが導入されて年月が経過していることもあり、ワクチンについても色々分かってきました。情報をリニューアルしておきましょうw (小児科 土谷)

