愛情は脳のどこに存在するのか。何に対する愛情が最も強いのか。機能的MRI(fMRI)を用いた研究の概要を紹介します( Cerebral cortex . 2024 Aug 01;34(8); pii: bhae331.)。
Six types of loves differentially recruit reward and social cognition brain areas – PMC (nih.gov)

この研究は、6つの対象(恋人や配偶者、自分の子ども、友人、見知らぬ人、ペット、自然)に対する愛情に関する短い物語を聞き、それぞれについて考えている間の脳活動をfMRI検査により調査したものです。
対象は、1人以上の子どもを持ち、配偶者や恋人などがいる、28〜53歳の55人(平均年齢40.3歳、女性29人)でした(55人中27人はペットを飼育)。
fMRIを行った結果、愛情を感じているときの脳活動は、愛情を向ける対象によって異なり、その対象が人間かそれ以外か(ペット、自然)によっても脳活動が異なることが明らかになりました(具体的には、人に愛情を感じているときは社会的認知機能に関わる脳領域が活性化していた)。また、愛情を注ぐ対象によっても活性化の強さの異なることが示されました(例えば、見知らぬ人に対する思いやりのような愛情を感じているときには、親密な関係を築いている相手に対する愛情を感じているときよりも脳の活性化が低かった)。
また、脳が最も強く活性化したのは子どもに対する愛情を感じているときで、その活性化の程度は他の脳領域に影響を及ぼすほど強かったことが分かりました。一方、自然やペットに対して愛情を感じているときは、脳の報酬系と視覚野が活性化するものの、社会的認知機能に関わる領域は活性化しないことが分かりました(ただし、実際にペットを飼っている人がペットに愛情を感じているときは、ペットを飼っていない人に比べて社会的認知機能に関わる領域が有意に活性化していた)。
以上から、愛情を感じているときは、主に社会的手掛かりの処理に関連する脳領域が活性化し、最も強い脳活動を引き起こしたのは「子ども」に対する愛情であったことが分かりました。
何とも微笑ましい結果になりました。
逆に、愛情を注がれた側の子どもの脳にはどんな変化が起きているのか? 興味がわくところですw (小児科 土谷)


