残念ながら、COVID-19パンデミック以降、製薬会社が利益を得るためにウイルスを作成した、世界人口を減らすためにウイルスがばらまかれたといった、さまざまな荒唐無稽な陰謀論が拡散されました。
今日は、そんなCOVID-19陰謀論を信じる人の特徴について調べた論文( PloS one. 2024;19(12);e0310673. pii: e0310673.)を紹介します。
COVID-19パンデミックの社会・医療への影響を把握するために実施された大規模調査「JACSIS(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)」のデータを用いた解析を行いました(JACSISは、インターネット調査会社のパネル登録者対象のweb調査として、パンデミック発生以降継続的に行われています)。今回の研究では、2021年9~10月に行った調査で得られた2万8,175人(年齢範囲16~81歳)の有効回答を解析対象としました。
英オックスフォード大学の先行研究に基づいて、1. 大手製薬会社が、ワクチンで利益を上げるために新型コロナウイルス感染症を作った、2. 新型コロナウイルス感染症は、全ての人々にワクチン接種を余儀なくさせるために作られた、3. このワクチンを使って、大規模な不妊化を実行しようとしている――という3項目を、COVID-19陰謀論として採用ました。これらについて、「強く賛成する」、「多少賛成する」、「どちらでもない」、「多少反対する」、「強く反対する」の五つから選択してもらい、前二者を選択した場合に「その説を信じている」と判定しました。このほかに、COVID-19に関する情報源、行政発情報への信頼の強さなども調査しました。
その結果、全体の10.2%は前記の陰謀論のうち一つを信じており、6.5%は二つ、7.3%は三つ全てを信じていました。年齢や性別、居住地、婚姻状況、世帯収入、教育歴などを日本の人口構成に一致させて調整すると、日本人の約4人に1人(24.4%)が何らかの陰謀論を信じていることが分かりました。信じている陰謀論の数と背景因子との関連を線形回帰モデルで検討した結果、教育歴、世帯収入、資産額、雇用状況、行政発情報への信頼などと、以下のような有意な関連が認められました。
教育歴については高校卒を基準として、教育歴が長い場合(修士または博士課程修了でΒ=-0.066)と短い場合(中学卒でΒ=-0.089)の双方で、信じている陰謀論が少ないという負の関連が見られました。世帯収入については高収入者において、信じている陰謀論が多いという正の関連が見られました(400~500万円を基準として800万円以上でΒ=0.069)。資産については100万円未満を基準として900~2000万円(Β=0.060)で正の関連が見られた(2000万円以上では非有意)。雇用状況については正規雇用者を基準として、失業・退職者(B=-0.078)、専業主婦・主夫(B=-0.086)、パートタイム(B=-0.051)、自営業(B=-0.102)のいずれも、負の関連が見られました。
COVID-19の情報源に関しては、政府機関のウェブサイトの利用者は非利用者よりも、信じている陰謀論が少なかった(B=-0.109)ことが分かりました。一方、X(旧Twitter)以外のSNS(Facebook、Instagram、YouTube、LINE)利用者は非利用者に比べて、信じている陰謀論が多かった(B値は0.053~0.093の範囲)ことが分かりました。このほか、日本政府を信頼している人はそうでない人に比べて、信じている陰謀論が多いことも分かりました(B=0.175)。
以上から、日本でCOVID-19陰謀論は24.4%(約4人に1人)の人に支持されていることが分かりました。そして、海外での先行研究とは逆の傾向が示されました(高収入、高資産、正規雇用が陰謀論の支持と正の関連があり、高学歴とともに教育歴が短いことも、陰謀論の支持と負の関連が認められた)。
陰謀論、または不正確な情報の流布と支持の高まりは、社会不安を拡大させ、公衆衛生対策に悪影響を生じさせます。
手にした情報は鵜呑みにせず、きちんと吟味しましょうね。 (小児科 土谷)

