子どもネタではありませんが、パンデミックが脳に及ぼした影響を検討した研究を紹介します(Nature Communications. 2025;16:6411.)。
Accelerated brain ageing during the COVID-19 pandemic | Nature Communications
脳の老化をマッピングするため、15,334人の健康な参加者の英国バイオバンクの脳スキャンで学習させた機械学習モデルを用いて、脳年齢ギャップとして知られる個人の予測脳年齢と実年齢の差を測定しました。次に、このモデルを用いて、英国内の健康な被験者996人の脳の磁気共鳴画像スキャンを2年以上あけて2回分析しました。対照群(564人)はパンデミック前に、「パンデミック」群(432人)はパンデミック前と後にスキャンを行いました。
ちなみに、脳年齢とはMRI画像から推定される「脳の見た目の年齢」で、実年齢との差(Brain Age Gap;BAG)が大きいほど脳がより老化していると判断されるものです。
その結果、約3年後の2回目のスキャンまでに「パンデミック」グループの参加者の脳は対照グループより平均5.5カ月早く老化していたことが分かりました。この加速はコロナ感染の有無にかかわらず起きており、SARS-CoV-2感染は参加者の年齢が上がるにつれて加速の割合が増加させていました。また、この脳の老化は、男性や、無職、低収入、不健康、および低学歴といった社会経済的不利を経験している人ほど顕著であることが分かりました。
さらに、両スキャン時に10項目の認知テストを行い、参加者の認知能力を評価した結果、脳の老化の加速は、特に柔軟な思考力や処理速度のテストにおいて、SARS-CoV-2感染者のみにおいて認知機能低下と関連していたが、それ以外のパンデミック群全体では認められなかったことが分かりました。
研究の限界はありますが、「パンデミック」という社会的イベントは、例えSARS-CoV-2に感染しなくても脳の構造的変化を引き起こし得るらしく、その影響は社会的な脆弱性により増幅される可能性があるみたいです。
日本でも同様なのか?興味があるところ。
そして次なるパンデミックに備えて、脳の健康状態を改善するための研究を進めていって欲しいものです。 (小児科 土谷)

