一応、旅行医学にも携わっているもので、今回は旅行医学、なかでも旅行者下痢症に関連した話題です。
旅行者下痢症の主な原因となる4種類の細菌(カンピロバクター、非チフス性サルモネラ、赤痢菌、下痢原性大腸菌)に対する抗菌薬の有効性について検討しました。2015年4月14日から2022年12月19日までの間に、世界58カ所の熱帯医療センターで治療された859人の旅行者下痢症患者(年齢中央値30歳、男性51%)が解析対象とされました。有効性は抗菌薬に対する感受性を指標とし、中等度感受性と耐性の両方をまとめて「非感受性」と定義しました。
その結果、カンピロバクターでは、フルオロキノロン系抗菌薬に対して75%、マクロライド系抗菌薬に対して12%が非感受性を示していました。同様に、非チフス性サルモネラではそれぞれ32%および16%、赤痢菌では22%および35%が非感受性を示していました。下痢原性大腸菌では、フルオロキノロン系抗菌薬に対して18%が非感受性を示しました。フルオロキノロン系抗菌薬の例は、シプロフロキサシン、デラフロキサシン、レボフロキサシンなど、マクロライド系抗菌薬の例は、アジスロマイシンやエリスロマイシンなど。
また、感染した地域により抗菌薬感受性パターンが異なることも明らかになりました。例えば、南・中央アジアで感染した患者から分離された赤痢菌の79%はフルオロキノロン系抗菌薬に非感受性を示したのに対し、南米で感染した患者から分離された赤痢菌の78%はマクロライド系抗菌薬に非感受性を示していました。
以上から、旅行者下痢症の治療に一般的に使われてきた抗菌薬が以前ほど効かなくなっていることが分かりました。
薬剤耐性増加の主な原因は抗菌薬の過剰使用である可能性が高いとの考えられており、日本だけでなく、世界レベルで、抗菌薬の適正使用が望まれます。 (小児科 土谷)

