院長先生のブログ
COVID-19 味覚・臭覚障害⑦
COVID-19による死亡患者23人および対照14人を対照として、嗅覚組織の変性の重症度、神経軸索の喪失、微小血管内皮障害の重症度について評価した論文(JAMA Neurol. April 11, 2022.(doi.org/10.1001/jamaneurol.2022.0154))です。
その結果、軸索病理スコア(範囲,1~3)はCOVID-19 患者で1.921,対照で1.198(P<.001)
軸索密度はCOVID-19患者で 2.973×104/mm2,対照で3.867× 104/mm2(P = .002)でした。
微小血管障害スコア(範囲,1~3)はCOVID-19患者で1.907、対照群で1.405でした(P < 0.001)。
嗅覚神経軸索と微小血管の病理変化はCOVID-19患者でも嗅覚障害を認める場合により高度で(軸索病理スコア,2.260対1.63;P = .002;微小血管障害スコア,2.154対1.694;P = .02)、臨床重症度やおよび感染のタイミング、ウイルスの存在とは関連性はありませんでした。
以上から、SARS-CoV-2感染が嗅覚組織での神経軸索損傷や微小血管障害をきたすことが分かりました。一部の症例で顕著な軸索病変を認めており、嗅覚障害が重篤/永続的となる可能性も示唆され、嗅覚病理ではウイルスによる直接傷害ではなく、局所炎症と関連している可能性も示唆されました。 (小児科 土谷)