院長先生のブログ
暑くても寒くても脳卒中は増加する
気温と脳卒中の罹患率および死亡率との関連について調べた論文(Brain and behavior. 2023 Jul;13(7);e3078. pii: e3078.)を紹介します(小児科ネタではありません)。
気温と脳卒中の罹患率および死亡率との関連を評価するためにメタ解析を行いました。
PubMed、Embase、Web of Scienceを用いて、データベース開設から2022年4月13日までに発表された研究を検索し、高温/低温環境のプール推定値は、ランダム効果モデルを用いて算出しました。
その結果、20件の研究が解析に含まれました。12件はアジアで実施されたもので、6件はヨーロッパと北米、南米とオーストラリアは1件ずつでした。すべての研究における気温は-33.1℃(カナダ)~40.9℃(中国)で、高温環境は90パーセンタイル以上、低温環境は10パーセンタイル以下としました。ほとんどの研究で気温のラグ効果は0~28日であると考えられました。
高温環境では、脳卒中罹患率の相対リスク(RR)は1.10(95%信頼区間[CI]:1.02~1.18、I2=74.2%)、脳卒中死亡率のRRは1.09(1.02~1.17、85.6%)で有意な関連を示しました。
低温環境では、脳卒中罹患率のRRは1.33(95%CI:1.17~1.51、I2=72.4%)、脳卒中死亡率のRRは1.18(1.06~1.31、85.5%)で有意な関連を示しました。
サブグループ解析で社会経済的地位で層別化すると、高温環境における脳卒中の罹患率および死亡率は、発展途上国よりも先進国で高かく、低温環境では先進国よりも発展途上国のほうが罹患率および死亡率が高かったことが分かりました。
以上から、暑さと寒さの両方が脳卒中の罹患率および死亡率を増大させ、発展途上国よりも先進国のほうが暑さによる脳卒中リスクが高いことが分かりました。
暑い日が続きます。子どもだけでなく、大人(高齢者含む)も健康管理を忘れずに! (小児科 土谷)