院長先生のブログ
SARS-Cov-2持続感染に対する抗ウイルス薬の効果①
以前のブログでもSARS-Cov-2持続感染に対する抗ウイルス薬の効果について取り上げましたが、その続きです(今回はあんまり小児と関係ないです)。
米国の65歳以上の高齢者を対象として、抗ウイルス薬のニルマトルビル(パクスロビド)とモルヌピラビル(ラゲブリオ)がlong COVIDの発症を抑制するか検討した論文(JAMA Intern Med. Oct 23, 2023.)を紹介します。
外来患者397万5690人のうち、57%が検討対象となりました。このうち19.5%でニルマトルビルが、2.6%でモルヌピラビルが使用されました。
long COVID発症率はニルマトルビル群で11.8%、モルヌピラビル群で13.7%、無治療群では14.5%で、絶対リスク減少率はそれぞれ2.7%、0.8%でした(ハザード比は0.87,0.92)。
以上から、ワクチン接種の有無について考慮されていないものの、感染後の抗ウイルス薬によるlong COVIDの抑制効果はあっても小さい可能性があると考えられました。
これまで期待されてきた、持続感染に対する抗ウイルス薬の効果は思ったよりも小さいのかも知れません。今後の報告が待たれますね。 (小児科 土谷)