院長先生のブログ
災害に備えよう 栄養②
先日に引き続き、今日は災害時の「赤ちゃんへの栄養(後半)」についてです。
◆人工乳(粉ミルク)を使用している場合
粉ミルクと哺乳瓶の両方とも殺菌が必要です(70℃以上、沸騰して熱いうちに溶かす)。
そして、調乳した粉ミルクは2時間以内に飲ませましょう。
災害時には殺菌する道具や薬品が手に入りにくいかもしれません。調乳に必要なものを予めリストアップして、いつでも持ち出せるように準備しておくと良いでしょう。
◆災害時にどうしたら良いでしょうか?
哺乳瓶の消毒・殺菌を十分できる時は哺乳瓶を使った授乳ができます。
哺乳瓶を殺菌することがむずかしい状況や清潔な哺乳瓶と乳首を準備出来ない場合は、「カップ授乳」を行います。
使用するカップ容器は清潔なものを用いますが、都度消毒が出来ない場合は衛生的な水でよく洗ってから使用するか、使い捨てコップを使用すると良いでしょう。
*カップ授乳(図の出典は神奈川県立こども医療センター母性病棟 2005/7/15)
1)赤ちゃんはできるだけ「立てて抱っこ」:授乳に集中できる環境で行いましょう。
授乳時間は30分はかかると思っておきましょう。
2)コップが下唇の上に軽く触れ、コップの縁が上唇の外側に触れるように:多少こぼしても気にする必要はありません(カップ授乳では、与えた量の30%以上をこぼすという報告もあるので、予め多めに乳汁を用意しておきましょう)。
3)コップに唇をつけたまま赤ちゃんが自分で飲むようにする:注ぎ込まないで、なめさせるようにすると良いでしょう。
◆液体ミルクを使用する場合
2019年3月から日本でも液体ミルクが発売されています。栄養の組成は粉ミルクと同じですが、調乳の手間がなくそのまま飲ませられる、70度以上のお湯による殺菌が不要であるといった粉ミルクとの違いがあります。
注意点としては、常温(通常は25℃以下)で保存可能で温めても構わないが再加熱は不可であること、高温の場所を避けて保存すること、保存期間に注意すること(紙パックは約6か月、缶は1年など)、開封後2時間以内に飲ませること、菌が増える可能性があるので飲み残しは捨てることです。
もしもの自然災害のために、普段から備えておきましょう。
災害が起こった後から準備することは不可能です。 (小児科 土谷)