院長先生のブログ
災害に備えよう 在宅医療②
災害などで発生する停電に際して、医療的ケア児には人工呼吸器などの電力を使う機器が必要な児もいるため、不安に感じる保護者の皆様もおられるかと思います。
昨日に引き続いて、準備の話が中心になりますが、在宅医療のお子さんと災害対策について理解を深めておきましょう。
◆被災時の電源の確保
在宅人工呼吸器、酸素濃縮器、吸引器などを日常的に使用している場合、電源確保が課題です。
内部バッテリーは時間が経つと劣化してしまいます。電源確保の方法として、車載インバーター(DC/AC変換器)カセットボンベタイプの自家発電機などがあります。
発電機は室内で使用すると一酸化炭素中毒の危険性があるため、発電機を室内で使用することは止めましょう。屋外で発電して屋内に電気を引く必要があるため、発電機を購入する際は電源コードリールも一緒に準備しておきましょう。
また、ハイブリッド自動車や電気自動車にケーブルを付け、発電する方法もあります。
◆在宅人工呼吸器
在宅人工呼吸器内蔵のバッテリーの稼働時間は大体4~10時間です。
加温加湿器は「湯沸かし器」なので120~300Wと大きな電力を消費します。人工鼻や呼吸器回路用人工鼻で保湿する方法もあります。
災害時の対応について、事前に電力会社や最寄りの消防署に連絡して確認しておきましょう。
*準備:アンビューバックの使い方に慣れておきましょう!
(アンビューはベッドや人工呼吸器の側に置いておこう)
*災害時:人工呼吸器の正常作動を確認しよう!
・異常な音や変なにおいはしないか?
・回路の破損は無いか?
・呼吸回路の各接続部に緩みは無いか?
・設定値が変わっていないか?
災害関連情報|一般社団法人 日本小児神経学会 (childneuro.jp)
◆在宅酸素療法
災害時の対応について、電力会社・最寄りの消防署に事前に連絡しておきましょう。
在宅酸素を取り扱う会社・医療機関にも災害時の供給システムについて確認しておきましょう。
準備
*酸素ボンベ(液化酸素装置)
電力を必要としないので災害時に有用ですが、設置にプロパンガス並みの面積が必要となります。
地震の揺れで飛ばないようにしっかり紐をつけてベッドや人工呼吸器の近くに結んでおきましょう!
*酸素濃縮装置
メンテナンスは容易ですが電源が必要なため、停電時は携帯型酸素ボンベに付け替える必要があります。
*携帯型酸素ボンベ
供給時間を把握しておきましょう(1L/分で投与した場合)。
Sサイズ(1.1L)で最大2時間45分、Mサイズ(2L)で最大5時間供給が可能です。
*両手が使えるライト(LEDヘッドランプなど)
停電中も切り替えられるようにライトをボンベの近くに常備しておきましょう。
(両手が使えるのでLEDヘッドランプが便利)
酸素ボンベの近くに置くため、熱くなる懐中電灯やろうそくは引火のリスクがあり厳禁です!!
◆吸引機
*電源を使う吸引器
多くは3way方式(家庭用コンセント、シガーライター、内臓バッテリー)です。
災害時はシガーライターを通じて、車から電源を取ることも可能です。
*電源を使わない吸引器
足踏み式と手動式があります。
手動式は持ち運びしやすく、価格も3000円程度と安価です。
足踏み式は両手が使えて便利です。価格は13000~20000円程度になります。
吸引カテーテルに20-50mlシリンジをつけて吸引する方法でも代用可能なので、平時に練習しておくと良いでしょう。