院長先生のブログ
鼻咽頭スワブで起こった鼻腔異物

冬季のこの時期はインフルエンザ流行期ということもあり、鼻咽頭スワブによる検査を実施する頻度が多くなります。
日本小児科学会から定期的に更新される「Injury Alert(傷害速報)」で、鼻咽頭スワブで起こった鼻腔異物が報告されていました。
新型コロナウイルス抗原検査キットによる鼻腔異物pdf (jpeds.or.jp)
鼻咽頭スワブによる検査を実施する場合、多くの場合は保護者の方が抱っこし、看護師やスタッフが頭を固定した状態で、スワブを鼻腔に挿入することになります。
今回の事例では、患児が暴れることはなかったそうですが、綿棒が途中で折れ、引き抜いたときには先っぽが鼻腔に残ってしまった模様です。
その後、高次医療機関の耳鼻咽喉科へ紹介されましたが、折れた綿棒の先は中鼻道にあって、外来で摘出困難な状況であったことから全身麻酔のもと、直視鏡で異物をカメラ越しに確認し、ニシハタ氏鋭匙鉗子によって摘出されました(翌日退院)。
鼻咽頭スワブの先にある綿棒は、安全を重視すれば綿棒の脆弱性が増し、簡単に折れないようにカチコチにすれば安全性に懸念が生じてしまいます。そのため、グニャリと曲がってしまうと、力を入れる方向によっては折れ曲がってしまうことが起こり得ます。
鼻腔にスワブを挿入する場合、上咽頭に到達させるため、迷入を避けるために口蓋と平行に鼻腔底に沿わせて挿入する必要がありますが、もしこれが頭側に迷入した場合、先端が折れて鼻腔異物になるリスクがあります。
このような鼻腔異物を回避するための策として、以下の4点が今回のInjury Alertで啓発されています。
1)不測の動きに備えて児の頭部をしっかり固定する
2)綿棒の挿入は必ず鼻腔底に沿わせる
3)綿棒の挿入に少しでも抵抗がある時は反対側の鼻腔で行う
4)後咽頭に達する最低限の長さで綿棒を把持する
院内で実施する場合はもちろんですが、薬局などで購入した迅速診断キットを用いてご家庭で検査する場合、同様の事例が発生する危険性があります。上記にくれぐれもご注意ください。 (小児科 土谷)