院長先生のブログ
食物アレルギーに対するオマリズマブの有効性
オマリズマブ(商品名:ゾレア)が複数の食物アレルギーを有する患者に対する単剤療法として、有効かつ安全であるかどうかを評価した論文( The New England journal of medicine. 2024 Mar 07;390(10);889-899.)です。
Omalizumab for the Treatment of Multiple Food Allergies | NEJM
被験者は、ピーナッツとその他の少なくとも2つ以上の試験指定食物(カシューナッツ、牛乳、卵、クルミ、小麦、ヘーゼルナッツ)にアレルギーを持つ1~55歳の患者で、食物負荷試験でピーナッツ蛋白100mg以下、その他2つの食物は300mg以下の摂取でアレルギー反応を呈する患者を含めました。
被験者を2対1の割合で無作為化し、オマリズマブまたはプラセボを2~4週に1回16~20週間、体重とIgE値に基づく用量で皮下投与し、その後負荷試験を再度実施しました。
主要エンドポイントは、ピーナッツ蛋白を1回600mg以上、(用量制限を要する)症状が出現することなく摂取できることとした。副次エンドポイントは3つで、カシューナッツ、牛乳、卵をそれぞれ1回1,000mg以上、用量制限を要する症状なしに摂取することとしました。この第1段階の評価を終えた最初の60例(うち59例が小児または思春期児)は、24週間の非盲検延長試験に登録されました。
その結果、462例がスクリーニングを受け、180例が無作為化されました。
解析には、小児・思春期児(1~17歳)177例が含まれました。
主要エンドポイントを達成したのは、オマリズマブ群79/118例(67%)、プラセボ群4/59例(7%)でした(p<0.001)。
副次エンドポイントの結果も、主要エンドポイントの結果と一致しており、カシューナッツ摂取ではオマリズマブ群41% vs.プラセボ群3%、牛乳はそれぞれ66% vs.10%、卵は67% vs.0%でした(すべての比較でp<0.001)。
安全性はオマリズマブ群がプラセボ群に比べ注射部位反応が多かったことを除くと、群間差は認められませんでした。
以上から、複数の食物アレルギーを持つ1歳以上の若年者において、抗IgEモノクローナル抗体であるオマリズマブの16週投与は、ピーナッツやその他の一般的な食物アレルゲンに対するアレルギー反応の閾値の上昇という点で、プラセボよりも優れていることが示されました。 (小児科 土谷)