院長先生のブログ
乳児RSV感染症と受動喫煙
RSV細気管支炎の重症度を決定する要因について調べた論文(Pediatrics. 2005 Jan;115(1):e7-14. doi: 10.1542/peds.2004-0059.)を紹介します。少し古めの論文ですがご容赦願います。
RSV細気管支炎の重症度に寄与すると考えられる、さまざまな環境因子および宿主因子をRSV Bronchiolitis in Early Life前向きコホート研究で評価しました。
気管支炎の重症度は、定量化された最低酸素飽和度と入院期間に基づいて決定しました。
これらの要因には、小児および家族の人口統計、家庭内アレルゲン(ダニ、ネコ、イヌ、ゴキブリ)の有無、末梢血好酸球数、IgE値、乳児期の栄養、既往歴、胎内および出生後の受動喫煙、アトピーの家族歴が含まれました。
重症RSV細気管支炎(平均酸素飽和度:91.6±7.3%、入院期間:2.5±2.5日、X線検査有:75%)の初回エピソードを有する生後12ヵ月未満(生後4.0±3.3ヵ月)の入院した乳児206例を前向きに登録しました。
喘鳴の既往、気管支拡張薬や抗炎症薬の常用、喘息、未熟児/気管支肺異形成などの慢性肺疾患、嚢胞性線維症などの肺疾患を有する児、薬物療法中の胃食道逆流症、胸部や肺の先天異常など有する児は除外されました。
その結果、年齢がRSV感染の重症度に大きく影響していたことがわかりました。つまり、乳児の年齢が低く、酸素飽和度が低いほど、感染症が重症化する傾向にあることが分かりました。
また、出生後に母親から受動喫煙を受けた乳児は、受動喫煙の無い乳児と比較して酸素飽和度が低いことがわかりました(重症度は胎内で受動喫煙に曝露された乳児と受動喫煙の無い乳児との間に有意差は認められませんでした)。
アトピーの家族歴、特に母親に喘息や花粉症の既往がある乳児では、酸素飽和度が高く、母親のアトピー歴は予防的働くと考えられましたが、アレルゲンと気管支炎の重症度には関連性は認められませんでした。
多変量解析の結果、年齢、人種、母親のアトピー、喫煙がRSV細気管支炎の重症度と関連していました。
以上から、乳児RSV細気管支炎の重症度は、家庭環境のアレルゲン量ではなく、出生後の母親からの受動喫煙と乳児のアトピーおよび年齢によって変化すると考えられます。
RSV感染による細気管支炎の重症化には、乳児の受動喫煙が大きく影響を及ぼすようです。他の報告でも受動喫煙はRSVによる超過入院数と死亡者数を増やすとされていることから、母親世代の女性は(可能なら)禁煙にチャレンジしてみると良いでしょう。 (小児科 土谷)