院長先生のブログ
RSVに対するニルセビマブの入院予防効果
RSウイルスに対するニルセビマブ(RSウイルス感染に対する免疫系の働きを特異的に増強する長時間作用型のモノクローナル抗体)の入院予防効果について検討した論文(MMWR. Morbidity and mortality weekly report. 2024 Mar 07;73(9);209-214.)を紹介します。
CDCの新ワクチンサーベイランスネットワーク(New Vaccine Surveillance Network;NVSN)から抽出した、2023年10月1日時点で生後8カ月未満か同年10月1日以降に生まれた乳児のうち、2023年10月1日から2024年2月29日の間に急性呼吸器感染症により入院した699人を対象に、ニルセビマブの有効性を調査しました。対象となった乳児のうち、407人(58%)はRSウイルス検査で陽性と判定され(症例群)、残る292人(42%)は陰性でした(対照群)。
症例群では6人(1%)、対照群では53人(18%)がニルセビマブの投与を受けていました。医学的にリスクの高い乳児は、健康な乳児に比べてニルセビマブを投与済みの者が多かった(46%対6%)ことが分かりました。多変量ロジスティック回帰モデルによる解析から、RSウイルス感染症関連での入院に対するニルセビマブの予防効果は90%(95%信頼区間75〜96%)であることが示されました。
以上から、ニルセビマブのRSVに対する入院予防効果は90%であることが、リアルワールドデータの分析から明らかになりました(この結果は第3相臨床試験の結果を上回るもの)。
母親へのRSウイルスワクチン接種は非常に大切です。
妊娠中にRSウイルスワクチンを接種出来なかった母親から生まれた乳児のための選択肢として、今後が期待されますねw (小児科 土谷)