この時期は学校健診のシーズンです。
その中には子どもの生活習慣病検診も含まれています。
そこで、生活習慣病に関連した話題にしたいと思います。
小児期から青年期にかけてテレビの平均視聴時間が長い(スクリーンタイムが長い)人は、大人になってからメタボリックシンドローム(MS)を有している確率は高まるのでしょうか(Pediatrics. 2023 Aug 01;152(2); pii: e2022060768.)。
1972年および1973年に、ニュージーランドのダニーデンで生まれた住民ベースの出生コホートデータを用い、小児期から青年期のテレビ視聴時間と45歳時点のメタボリックシンドロームとの関連を調べました。対象者が5歳、7歳、9歳、11歳、13歳、15歳および32歳になった時点で、対象者の親または対象者自身から平日のテレビ視聴時間を尋ねました。
45歳の時点で、メタボリックシンドロームの有無を調べ、心肺機能を評価するため、運動をさせ後に心拍数を計測し、VO2max(最大運動時の酸素消費量)を推定しました。
メタボリックシンドロームは、HbA1cが5.7%以上、腹囲が男性102cm以上、女性88cm以上、中性脂肪が200mg/dL以上、HDL-コレステロールが男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満、血圧が130/85mmHg以上または降圧薬を服用、のうち3つ以上を満たすものと定義しました。生存していた参加者997人のうち870人(87%)からテレビ視聴時間とメタボリックシンドロームに関するデータを収集しました。分析にはロジスティック回帰モデルとt検定を用いました。
5歳から15歳までの平均テレビ視聴時間と45歳時点でのメタボリックシンドロームの関連を調べるため、対象者を視聴時間で0~1時間、1~2時間、2~3時間、3時間以上の4つの群に分けたところ、視聴時間が長いほど、男女ともメタボリックシンドロームの割合が増加していました。また、平均テレビ視聴時間が1時間増加した場合のオッズ比(OR)は、性別のみを調整すると1.33(95%信頼区間1.11~1.58、P=0.002)と有意な関連が見られ、次に、性別と社会経済的地位、5歳時点のBMIで調整しても1.30(同1.08~1.58、P=0.006)と有意なままでした。
さらに、32歳時点のテレビ視聴時間を調整因子に加えたところ、ORは1.26(同1.03~1.54、P=0.026)と有意であった上に、VO2maxの低下(係数-0.70、95%信頼区間-1.20~-0.19、P=0.007)とBMIの上昇(同0.59、0.11~1.06、P=0.016)のいずれとも有意に関連していました。
以上から、小児期から青年期にテレビ視聴時間が長いと、中年期のメタボリックシンドロームリスクが上昇する可能性があることが示唆されました。
若年期(小児含む)のテレビの長時間視聴は健康に長期的な悪影響を与えるようです。
ついつい楽しいと(TVに限らず)スクリーンタイムが長くなってしまいがちですが、何事もほどほどに。外で体を動かすのも良いものです! (小児科 土谷)