9月ということで、救急の日が近づいてきました。それにちなんで救急ネタにします。

蘇生に関するガイドラインでは、「院外心停止時の薬物投与には静脈路を優先し、静脈路が確保できない場合は骨髄路を使用すること」が推奨されていますが、今回はこの血管アクセスに関する論文(BMJ (Clinical research ed.). 2024 Jul 23;386;e079878.)です。

Intraosseous versus intravenous vascular access in upper extremity among adults with out-of-hospital cardiac arrest: cluster randomised clinical trial (VICTOR trial) | The BMJ

 

クラスター無作為化比較試験「Venous Injection Compared To intraOsseous injection during Resuscitation of patients with out-of-hospital cardiac arrest trial:VICTOR試験」の結果を報告したものですが、このVICTOR試験は、2020年7月6日~2023年6月30日に、台北市消防局に所属する4つの高度救命救急チームが参加し、台北市内のすべての救急病院で実施された(2021年5月20日~2021年7月31日はCOVID-19流行のため一時中断)ものです。

 

非外傷性院外心停止成人患者(20~80歳)を対象とし、4つの高度救命救急チームをそれぞれ2週ごとに骨髄路群または静脈路群に割り付け(クラスター比率は1対2)、骨髄路群の患者には機械的骨髄内穿刺、静脈路群の患者には上肢の静脈内穿刺が行われた。両群とも血管アクセスが確保された後、アドレナリン(エピネフリン)1mg、続いて生理食塩水10mLを急速注入しました。主要アウトカムは生存退院、副次アウトカムは病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開(2時間以上)、退院時の良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリースコア≦2の生存)などでした。

 

その結果、基準を満たした1,771例が登録され、主要アウトカムのデータが得られた1,732例(骨髄路群741例、静脈路群991例)が解析対象(年齢中央値65.0歳、男性1,234例;71.2%)となりました。

 

生存退院は、骨髄路群では79例(10.7%)であったのに対し、静脈路群では102例(10.3%)でした(オッズ比[OR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.76~1.42、p=0.81)。副次アウトカムも、病院到着前自己心拍再開(OR:1.23、95%CI:0.89~1.69、p=0.21)、持続的自己心拍再開(0.92、0.75~1.13、p=0.44)、良好な神経学的アウトカム(1.17、0.82~1.66、p=0.39)のいずれも、両群間に有意差は認められませんでした。

 

以上から、非外傷性院外心停止成人患者において、骨髄路確保と静脈路確保を比較した場合、生存退院、病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開、良好な神経学的アウトカムのいずれについても有意差がないことが分かりました。

 

小児の場合、血管アクセスが基本的に困難なことが多いため骨髄路を選択する場合が多いですが、成人でも骨髄路確保は、静脈路確保の代替ではなく第1選択として考慮しうるものと思われます。その場の状況に応じて、上手く使い分ければ良いってところでしょう。。

 

ちなみに今年は2025年。

この秋に救急のガイドラインが大きく刷新される年でもあります。

どんなところが変更されるのか、興味が沸くところですねw (小児科 土谷)